『パンドラの果実』の「かもしれない」出来事 ディーン・フジオカが信じたい可能性とは

 「心」はどこにあるのだろう。普遍的なテーマについて、切なさと少しの希望を残した『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ系)の第3話。この世界は分からないことばかりだが、とりわけ人間について、客観的で公正なジャッジをくだすことは難しい。どうしても夢を見たくなるし、優しいほうの可能性を信じたくなる。我々視聴者も、警察官も科学者も、人間なのだ。

 遺体安置所に不法侵入した動画配信者。そのカメラの前で、遺体が起き上がり、歩き始めるという不可解な事件が起こった。「遺体がよみがえった」とつぶやき、安置所の監視カメラ映像を見つめる小比類巻(ディーン・フジオカ)。その脳裏には、よみがえりの日まで冷凍下で保存され続ける亡き妻・亜美(本仮屋ユイカ)の姿が浮かんだことだろう。

 “よみがえった”土屋はその後、行方不明となっていた。県警は、混乱を防ぐべく「徘徊老人」として土屋の捜索を開始。長谷部(ユースケ・サンタマリア)がその指揮をとる。土屋は、20年前に事故で妻と娘を事故で亡くしていた。しかし、二人が戻ってくることを信じ、一人で生きてきたのだという。小さな段ボールに収まるほどのわずかな遺品のなかには、亡き娘が描いた家族の絵が大切にしまわれていた。

 「心はどこにあるのか」。最上(岸井ゆきの)は「心」の存在自体が確実なものではないとしながらも、あるとするならば、脳ではないかと答える。一方で小比類巻は、臓器移植後に起こった性格変異や事件を例に、「細胞記憶」の説を支持した。心は肉体にも宿る、そう信じたいと小比類巻。「細胞に心はないと思う」、そう言った最上の表情には複雑な心情が見え、なにか思い出すところがあるようにも思えた。

 翌朝、土屋の目撃情報が出た。彼が触れた車のフロントガラスから、付着物の成分を調査すると、植物の再生力を研究する安田(華優希)が生成したタンパク質が検出された。故意の出来事ではない。土屋が死亡した日に空調メンテナンスが行われていたこと、土屋の脳に損傷がなかったこと、さらに死亡する直前まで強心剤が打たれていたこと――それら複数の偶然が、今回の「よみがえり」を起こしたのだった。

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