黒島結菜×竜星涼の純粋性が『ちむどんどん』の鍵 “善の心”がおかしく見えてしまう哀しさ
“朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』、第4週「青春ナポリタン」は、何をしたいのかわからないでわじわじしていた暢子(黒島結菜)が魂を燃やすものを見つける。それは東京に行って料理人になること。高校の料理部が参加した産業まつりのヤング大会で、暢子は見知らぬたくさんの人に料理をおいしいと食べてもらうことに喜びを覚えた。
ヤング大会に暢子は助っ人として参加した。いろいろ試した末、シークワーサーを練り込んだ麺のやんばるそばに決定。まつりの当日、好評を博したのもつかの間、様々な障害が暢子を襲い……。そんなとき暢子はシークワーサーをかじってアイデアを巡らせ、やんばる焼きそばに切り替える。暢子の山原高校、ライバルの南山原高校、それぞれの料理部部員たちに気鋭の俳優が集まって青春ものの雰囲気が色濃くなった。
第17話、18話、19話と、終わり方に、どうなるの~と次回が気になる引きがあり、視聴気分が上がる。第17話は、歌子(上白石萌歌)を探しに下地(片桐はいり)が来て、見つかっちゃう?となり、第18話は、あやしい投資話を信じた賢秀(竜星涼)が優子(仲間由紀恵)にお金を借りようとしていて大丈夫?となり、第19話は、大事な汁をこぼしてしまったリカバリー策を暢子が閃く。ストーリーはシンプルで、歌子と下地の追いかけっこはやがて歌子が歌の道に進むことを予感させ、賢秀は騙されて比嘉家を窮地に落とすであろうと心配させ、暢子は料理人として目覚めていき、おいしいものが人と人を平和に結びつけていくのだろうという希望を提示する。
脚本家の羽原大介がアニメ『ふたりはプリキュア』シリーズの脚本を書いていたことがあるからか、ヤング大会の暢子たち高校生とプリキュアのキャラクターの絵が重なって見えてきた。『ちむどんどん』にはどこか東映動画の子ども向けアニメのような勧善懲悪のイメージがある。そして、暢子には『プリキュア』や『ONE PIECE』の主人公を想起させるものがある。もちろん最近のアニメは基本、勧善懲悪にしてもそこに様々な工夫をして単純に見せないような工夫があることもわかっているのだが、基本構造は、主人公は純粋で不屈で仲間を大事にして、悪は主人公の光の力に敗北するものが少なくない。
『ちむどんどん』はタイトルバックをアニメにするくらいだから、たとえば、暢子がシークワーサーをかじって力を漲らせるところには思いきってCGを使ってキラキラ魔法の粉が舞うような画にする方向に振り切ってもいいのではないか。そこまではしないのはなぜだろう。予算の問題? いや、おそらくだが、あくまで人間の力に掛ける想いを残しているのではないだろうか。その最たるものが、片桐はいりの演じる下地響子先生だ。はにかみ屋の歌子の音楽的才能を見出し、歌わせようと追いかけ回す。その際、片桐は自身の身体の表現力で、ユーモラスな漫画のような動きをしている。肉体に負荷をかけることでただ追いかけているだけの時間に滞空時間を保たせる。
下地先生は歌に人間の魂を乗せることが可能だと説く。彼女と同じような考えをもっているのが良子(川口春奈)の憧れの存在で、教師をやっている石川博夫(山田裕貴)だ。彼は言葉の力が革命をもたらすと良子に語る。人間の発する言葉や歌や身体表現は世界を変える力になり得るのだ。料理も然り。だからこそ俳優たちの表現に期待がかかる。