松下洸平「一途でありたい」 『やんごとなき一族』『最愛』など役との共通点を探る

 2022年も、新しい役を演じるごとに新たな一面を見せ、魅力を更新し続けている松下洸平。現在放送中のフジテレビ木曜劇場『やんごとなき一族』では、深山家の次男・深山健太役を演じ、土屋太鳳演じる妻・佐都との愛を育んでいく日常の姿に反響が寄せられている。

 『最愛』(TBS系)で演じた大輝に続き、健太役を見ていても“一途な役”がピッタリくる松下。実際の松下自身の人との向き合い方を聞いていくと、家族思いで愛情深い健太と共通する姿が見えてきた。(編集部)

健太のような立場だったら「半日で音を上げる」

――『やんごとなき一族』は独特な世界の話かと思います。作品を通して新たに感じたことや、新しい視点などはありましたか?

松下洸平(以下、松下):台本を読んでいるときには正直、こんな世界があるのかと思っていました。登場人物はそれぞれキャラが濃いし、ご覧になる皆さんがどこまでこの世界に入っていけるだろうかと不安な部分もありました。ですが映像化してみると、すごくリアル。それぞれの個性が際立っているし、ついクスクス笑いながら観ることができます。加えて、それぞれが抱えている問題とか、悩みとか葛藤という部分では、普通に生活している僕を含め、視聴者の方々にも共通するものがある気がしたんです。抱えている問題自体は上流階級ならではのものではありますが、実生活において皆さんが日頃抱いている悩みとリンクする部分もたくさんあるように思いました。そういう意味でも、何か他人事ではないという思いでこのドラマを観ることができたのは新しい視点でしたし、いろいろな目線で楽しんでいただけたら嬉しいです。

――そんな“やんごとなき一族”の中に入ってみていかがですか?

松下:僕自身がもし、深山家の健太のような立場だったら……無理です。半日で音を上げるでしょうね(笑)。しきたりが独特すぎる。親同士が認めた相手じゃないと結婚できないことや、自分の意思が父親の存在によって蓋をされてしまうこと。たくさんの高価なものを身に付けて、何不自由ない生活を送る代わりに、失うものが大きすぎる。深山家は代々400年以上続く名家であるからこそ、その中で生きてきた人たちはたくさんのものを得たはずだし、一般の人には手の届かない生活をしています。その反面、佐都やその家族から感じられる普通の幸せを手にすることができないんですよね。健太のように、どちらを選ぶかだと思いますが、僕は普通でいたい!

――共演者の方の突き抜けた演技に対し、お芝居のバランスで気をつけている部分があれば教えてください。

松下:監督からの要望は、僕と佐都の2人には普通でいてほしいということだったので、そこは心がけています。でも、松本若菜さんや尾上松也くんは本当に振り切ったお芝居をされているので、一緒に作品を作る俳優同士としては救われているし、助けてもらっているんです。ただ、健太と佐都の目線で考えると、僕たちはあくまでも普通にしないといけない。リアルな2人の関係性を描くための芝居をしなきゃいけないんですけど、あれだけ面白い芝居をされると、「楽しそうだな」と思って僕もやりたくなりますね(笑)。

――確かに松本若菜さんのお芝居は印象的でした。

松下:僕も1話を観て、思わず松本さんのシーンを巻き戻しました。特に、「桜を愛でる会」終わりに、家で美保子(松本若菜)、リツコ(松本妃代)、有沙(馬場ふみか)の3人がクッションを投げあうシーンが好きです。僕と佐都は、役の上ではあの3人を見て失望しなきゃいけないのですが、本当に笑いをこらえるのに必死で(笑)。あとは、サウナ室に佐都を閉じ込める美保子とか、健太のうしろで鬼のような顔をしている明人(尾上松也)とか……。最高です!

――現在、撮り終わっている中で印象的なシーンはどこですか?

松下:1話で、佐都と健太が「まんぷく屋」で話し合うシーンがすごく好きでした。あれはまさに、お互いのコンプレックスを隠さず話すシーン。佐都にとっては、健太と一緒にいることが自分にとって恥じてしまうようなことなんじゃないかと思う。健太にとっては、自分が裕福な家庭に育ったことが何よりのコンプレックス。お互いがコンプレックスを抱きながら、それでも最終的に相手が好きだという気持ちがまさっていく瞬間だと思います。あそこは僕らもすごく丁寧に撮ったし、2人の絆がよく見えるシーンだなと思っています。

――本当に感動的なシーンでしたね。

松下:それと、佐都が深山家に入っていろんなことを学んでいくシーンにもグッときています。僕は健太の目線で観ていたのですが、これだけ頑張ってくれているんだと思いました。だから僕自身も佐都のためにできることは何だろうと考えています。あとは、1話冒頭で佐都はまだ「まんぷく屋」にいるじゃないですか。それが、もう既に懐かしいんですよ。彼女が深山家ではないところで暮らしていた頃の、一般庶民だった佐都の姿が、すごく懐かしく思えてきて。作品のために、みんなで時間を重ねてきたんだなと感じた瞬間でした。

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