山田涼介に“良い脚本"を? 年々高まる演技力と『大怪獣のあとしまつ』以降の出演作の行方

 そして、原作ものではないが、“山田は作品に恵まれない”という決定的な印象付けたのが、映画『大怪獣のあとしまつ』。人類を恐怖に陥れた大怪獣が死に、その死体を誰が処理するのかという内容の本作は、特撮ファンも興味が惹かれる設定のおもしろさと、松竹と東映による初の共同製作作品というビッグプロジェクトなだけに、公開前から『シン・ゴジラ』並みに期待されていた。しかし、本編はいろんな意味で期待はずれの声が多数あがる結果に。三木聡監督はもともとシュールな笑いを提供する監督なので想定内でもあるのだが、シリアスな予告編の出来の良さと、山田と土屋太鳳といった真面目な役が多いメインキャストだっただけに、内容に惹かれた観客たちは期待を大きく裏切られたのだろう。シュールなギャグの中に山田がいることのおもしろさを狙ったものと考えられ、全力で真面目に演技をする山田は自分に課せられた任務は全うしたように思うし、現に出演者への責任を問う声は皆無に等しい。

 こうした流れは、山田ファン以外の映画好きからも同情の声が大きく、「山田涼介に良い脚本の映画をやらせて」という現象が起こる。また映画ファンからすると、かえって“ジャニーズのイケメン俳優”止まりだった印象が、20代後半となった山田のキャラクター性と演技力が注目されるようになったのも事実。

 そんな中で現在出演しているドラマが『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系)だ。幼い頃から容姿端麗ゆえに人気があり、人生でずっと自分が主役であった主人公・丸谷康介。しかし未来からやってきた将来の自分(古田新太)との出会いをきっかけに、これまでの人生が崩壊していくという、自分の容姿を生かした自虐的な役を演じている。また、これまで意外にも演じてこなかったラブコメへの挑戦も、王子様のような山田のキャラがあってこそ、キャラを崩していく究極の自分いじりの面白さにつながる。

 この思い切りの良さにも、『大怪獣のあとしまつ』を経験したことで、どこか吹っ切れた印象を感じる。もちろん当たり役となる素晴らしい脚本に出会えるのが一番だが、いかに自分の演技をしていくのかが最も重要ではないだろうか。山田のキャラをいかに生かし、愛おしい存在に見せられるかが今後も変わらない課題である。確かな演技力があるだけに、どこか浮世離れした唯一無二の存在としてこのまま走り続ければ、さらに魅力的な俳優になることは間違いない。今はどんな作品に出演しても怖くない“無敵状態”だからこそ、これからも様々な役に挑戦してもらいたいところだ。

参照

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/08/18/kiji/20170818s00041000277000c.html

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