『カムカム』「これが人生」と噛みしめる格好いいひなた “あの頃”と違った文ちゃんの告白

 そして、映画の制作チームがつつがなく全ての工程を終えた夜、ひなたは文四郎と2人で飲みに行くことになった。淡い期待を胸に、いつもより自分を着飾って出かけるひなた。はにかむ笑顔から、思い出に耽る文四郎の横顔に胸をときめかせているのが伝わってくる。しかし、そこで明らかになったのは、文四郎に新たな恋人ができているということだった。お相手は映画でコスチュームを担当するアメリカ人のデイジー。駆け出しの身だが、迷わずプロポーズすると文四郎は覚悟を決める。それは皮肉にも、「大部屋俳優のままじゃダメなんだ」とひなたとの結婚を躊躇していたあの頃とは対照的でほろ苦い。でも、ひなたも「これが人生」とその苦みを味わえるクールな大人になった。すっきりとした表情で文四郎をデイジーの元に送り出せたのは、彼女もまた日向の道を見つけることができたからだろう。

 一方、前回の放送でアニーが呟いた「それが人生ってものなの」は、ひなたと同じ台詞でもまったく違って聞こえる。ひなたや虚無蔵を後悔のない道に導こうとしながら、彼女が自分のために使う言葉にはどこか諦念の色が混じっているのだ。さらに気になるのは、ひなたが差し入れした回転焼きを食べた時の表情。るい(深津絵里)が安子(上白石萌音)から教わった“おまじない”入りのあんこを一粒手に取り、口に運んだアニーは懐かしさを噛み締めるように目を瞑る。その理由がわかる日はきっと近い。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK

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