今はなき場所に思いを馳せる人へ 『GAGARINE/ガガーリン』に詰まった夢

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、先日、通っていた保育園の跡地を見て悲しくなった大和田が『GAGARINE/ガガーリン』をプッシュします。

『GAGARINE/ガガーリン』

 タイトルにある「ガガーリン」とは、「地球は青かった」の言葉で有名な宇宙飛行士ガガーリンにちなんだ名前を持つ「ガガーリン団地」が由来です。2019年にパリ五輪のために取り壊された「ガガーリン団地」。本作が長編デビュー作となるファニー・リアタール&ジェレミー・トルイユの2人の監督は、2014年、映画を撮るためにパリを訪れ、団地の取り壊しに関する調査をしていた建築士の友人から「映像作品を撮ってほしい」と依頼を受けたのが始まりだと振り返ります。

 主人公は、宇宙飛行士を夢見ながら、ガガーリン公営住宅に一人で暮らす16歳のユーリ(アルセニ・バティリ)。2024年パリ五輪開催のため老朽化したガガーリン団地の解体計画が持ち上がり、ユーリは帰らぬ母との大切な思い出が詰まったこの場所を守るため、友人のフサーム(ジャミル・マクレイヴン)とディアナ(リナ・クードリ)と一緒に取り壊しを阻止するために動き出します。

 ユーリは友人の力を借りながら、エレベーターや配線を直していき、なんとか団地を守ろうと必死になります。ユーリにとってこの場所は母を待ち、自分にとって唯一の居場所。そして同じ団地に暮らす人々が、大好きだからこそ、守りたいという思いがとても伝わってきます。広場で仲間たちと踊り、皆で皆既月食を楽しむ。この場所で、ここに住む人々と共有されるかけがえのない時間が、ユーリにとっての青春なのです。

 トルイユ監督は「僕たちはすぐに、ガガーリン団地とそこに住む人たちの虜になった」と明かしており、住人たちのキャラクターに、その経験が反映されているのがわかります。

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