「『湯あがりスケッチ』穂波の湯あがり日記」第4湯 「伝えきれない想いはお湯に浮かべて」

 塩谷歩波の『銭湯図解』を原案としたドラマ『湯あがりスケッチ』が2月3日よりひかりTVにて配信された。全8話で構成される本作は、毎話ごとに今も実際に営業している都内の銭湯と、それぞれのエピソードの鍵となる8人の女性が登場し、銭湯のように心温まる物語が紡がれていく。

 主人公・穂波を演じる小川紗良が、“穂波”として執筆した「穂波の湯あがり日記」が到着。各話で穂波が感じたこと、考えたことが、日記形式で綴られている。

第4湯 佐和子(室井滋)さんがもう一度来てくれたときに

 このごろ、銭湯の効用がわかってきた。たっぷりのお湯で体を温めて、新陳代謝が高まること。あつ湯と水風呂で交互に刺激を受け、自律神経が整うこと。ジェット風呂で体をほぐせば、肩こりや腰痛に効くこと。天然温泉や薬湯ならば、さらに多様な効き目がある。「銭湯好きに病人なし」なんて張り紙を見たこともあるけれど、ここにいると本当にそんな気がしてくる。

 「タカラ湯はさ、万病に効くからね!」と熱く語る佐和子さんの勢いには、さすがに驚いてしまったが。佐和子さんはタカラ湯の常連で、とてもおしゃべりで愉快な人だけど、愛之助(村上淳)さんいわく「ほどほどに」付き合うべきだという。確かに、佐和子さんの言葉には度々首をかしげたくなるし、あの勢いに困惑するお客さんもいるようで……。でも、ほどほどの付き合いって、一体どれくらいなものだろう。

 先日、思い切って佐和子さんに「タカラ湯は万病に効くわけではない」と伝えたら、それ以来ぱったり見かけなくなってしまった。しゅんと背中を丸めて去っていく佐和子さんの後ろ姿が、ずっと引っかかっている。私は、独り身の佐和子さんの大切な居場所を、奪ってしまったのではないだろうか。拒絶するつもりはなくても、そう受け取られてしまったのではないか。ほどほどな言葉の伝え方って、受け取り方って、難しい。

 言葉で伝えきれない想いは、お湯に浮かべて贈ろう。そう思い立って、私は今日、愛之助さんに薬湯を提案した。ゆず湯、よもぎ湯、実母散。取材で培ったさまざまな知識を、タカラ湯でも実践してみよう。佐和子さんがもう一度来てくれたときに、胸を張って「万病に効くからね!」と言える銭湯を目指して。銭湯の一番の効用は、どんな人でもくつろいで、心を解放できることなのだから。

■放送情報
『湯あがりスケッチ』
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信【全8話】
原案:塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト:https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
公式Twitter:https://twitter.com/yuagari_sketch
特集ページ:https://realsound.jp/movie/2022/02/post-960070.html

関連記事