安藤政信、今再びのブレイクへ 『金魚妻』『ゴシップ』でも光る俳優としての円熟味
キャリア初期には何本かテレビドラマにも出演していたが、当時は映画へ出演することに強いこだわりを持っていた安藤。2000年代後半にパタリと出演作が途絶えたかと思ったら中国や台湾で映画出演(“南極説”が流れたのはこの頃ぐらいだったと記憶している)を果たす。かと思えば、2017年に『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 3rd season』(フジテレビ系)でおよそ20年ぶりに連ドラ出演を果たして以降、一気に日本国内でのテレビドラマへの出演が急激に増えるのである。安藤本人にこれまで避けてきたことへチャレンジしようという意欲が生まれたことも理由のひとつではあると思うが、それを多くの作り手たちが待ちに待っていたとも考えられる。
興味深いことに寡黙な役柄やミステリアスな役柄、果ては完全な悪役と、その役柄の文脈上は前述の『バトル・ロワイアル』に端を発したようなダークサイドが定番化する。社会現象を巻き起こした『あなたの番です』(日本テレビ系)では序盤からまったく素性のわからない謎の住人の役。完全に田中圭ら他のキャストとは異なる空気を放ち、終盤でその正体が“こっそりワニを飼育していた氷彫刻家”であると判明しても、そんなエキセントリックさを思わず受け入れてしまいたくなるような表情をのぞかせるのだから流石である。もっとも、あまりに劇中における異質な存在だったため『劇場版』に登場しなかったのは残念ではあるが。
それにしてもその『あな番』以降、大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合)や『テセウスの船』(TBS系)と、大きな作品に脇役ながらもたしかな味を与え、すっかりドラマ俳優としても円熟味を増した印象だ。『金魚妻』ではいきなり激しい濡れ場を演じ、ある意味で杓子定規的になりかねない役柄に適度な不快感を与える絶妙な演技で場をさらう。『ゴシップ』においても主人公との関係性が作品のフックとなりそうなキーパーソンとして機能するなど、さまざまなタイプの役柄にいまなお積極的に挑戦し続けていることが窺える。
2000年代前後には、“安藤政信が出ているからおもしろい”といえる時代が確かにあった。2020年末に事務所を退社しフリーの俳優となり、よりフットワークの軽く自由度の高い俳優になったいま、そんな時代がふたたび戻ってきた。
■放送情報
『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、溝端淳平、野村周平、野間口徹、石井杏奈、寛一郎、一ノ瀬颯、高橋侃、宇垣美里、大鶴義丹、りょう、安藤政信、生瀬勝久ほか
第5話ゲスト:茅島みずき
脚本:関えり香、橋本夏、青塚美穂
演出:石川淳一ほか
プロデュース:芳川茜
編成企画:渡辺恒也、高木由佳(※「高」はハシゴダカが正式表記)
制作:フジテレビ
制作・著作:共同テレビ
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