臼田あさ美から立ち上る映画の匂い 『湯あがりスケッチ』が描き出す心に残り続ける“シミ”
銭湯の壁のシミを「夕焼けみたい」と祖母がかつて言っていたことを、里穂は懐かしく思い出し、年季の入ったそのシミを愛おしげに見つめ続ける。穂波にも里穂にもある「子供の頃、母・祖母に髪を乾かしてもらった記憶」が、目の前の母子の風景をきっかけに呼び起こされたことを「知らないうちに記憶のどこかに焼き付いているようなことって、いっぱいあるんだろう」という穂波。その言葉に対し里穂は「シミみたい」だと笑う。
壁のシミ、記憶の中の祖母の年齢を重ねた肌、祖母手作りの最後の漬物。洋服、巾着、ポーチ。そのどれもが、死者の遺していった「忘れ物」であり、「シミ」のように、彼女を愛した/彼女が愛した人々の心に、残り続ける残像でもある。
そして、時間を経て見つけられた、蒲田温泉の「忘れものボックス」の中の宝物。それは、紛れもなく彼女の祖母のものであることがわかる、鈴つきのポーチだった。鈴は、ラムネの瓶の中のビー玉がカランコロンと音を立てるその軽やかな音と同様に、軽快な音を立て、里穂の心を優しく包み込む。
これは里穂の物語だ。それと同時に、彼女や、彼女の母たちの記憶の中から立ち昇る、もうここにはいない人、祖母の物語でもあった。
ひかりTVでは『湯あがりスケッチ』をはじめとして、銭湯・サウナを舞台にしたドラマを多数配信中!
■放送情報
『湯あがりスケッチ』(全8話)
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信
原案:塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト:https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
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