『カムカムエヴリバディ』ひなたの初恋終わる 昭和51年、テレビ全盛期の流行も次々と登場

 1976年、ひなた(新津ちせ)は11歳。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第69話では、昭和51年当時の流行を小学生の視点から切り取った。

「お父ちゃん、アメリカってどこにあるん?」

 小夜子(竹野谷咲)からビリー(幸本澄樹)がアメリカ出身と聞いたひなたが、錠一郎(オダギリジョー)に尋ねる。そばで見ていたるい(深津絵里)が「ここや」と指さす。地球儀を前にした親子の会話。るいの言葉を耳にしてどうにも落ち着かない気分になるのは、るいが自分を置いてアメリカへ渡った安子(上白石萌音)のことをどう思っているか気になってしまうからだ。ラジオ英語会話が続いていることを知った時のるいの表情は、なつかしさだけではない感情が去来しているように見えた。

 地球儀を眺めながら「遠い?」と聞くひなたに、「そうやね、ちょっと遠いね」とるい。安子がいなくなったあの日から20年以上が過ぎて、母の面影は過去のものとなりつつあった。錠一郎にとってもアメリカは憧れの国である。広い空の下で「On the Sunny Side of the Street」を吹きたいという夢。トランペットを吹けなくなってから久しく、今は家庭の父親として幸せな日々を過ごしているが、るいと2人で抱いた夢を忘れたわけではない。それも時が経つにつれて記憶の1ページに変わっていく。距離と時間の対比が人生の年月を感じさせるシーンだった。

 小学生の毎日は忙しい。朝6時45分に起きてラジオの英語講座を聞き、学校に行くと、一恵(清水美怜)たちと山口百恵のものまねに興じる。帰宅すれば、国民的番組としてその名をとどろかせた『8時だョ! 全員集合』を視聴し、休日は吉之丞(石坂大志)たち男子とザリガニ獲りに出かける。寝る前には、一恵から借りた漫画雑誌で『ガラスの仮面』の内容もチェックしなくてはならない。この他にも、アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)や世界名作劇場『母をたずねて三千里』(フジテレビ系)、連続テレビ小説『雲のじゅうたん』(NHK総合)、キャンディーズ、ノストラダムスの大予言も劇中に登場した。

関連記事