『カムカムエヴリバディ』親子の思い出がシンクロ 安子からるい、そしてひなたへ

 大月家に古びたラジオがやってきた。るい(深津絵里)は、英語がしゃべれるようになりたいというひなた(新津ちせ)に、毎朝ラジオ英語講座で勉強することを提案する。NHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が第15週初日を迎え、ひなたは錠一郎(オダギリジョー)の協力もあって、英語の勉強を始める。

 第14週の終わりに、ラジオから流れる「証城寺の狸囃子」を聞いたるいは、母・安子(上白石萌音)とともに聴いていたラジオ英語講座を思い出した。るいは物語を重ねるごとに、安子と過ごした楽しい日々を思い出すことが苦しくなくなっているようだ。るい編が始まったばかりの深津の表情は固く、塞ぎ込んでいた。大阪での日々のおかげで、段々と伸びやかな笑顔を見せるようになったるいの表情は、今はとても柔和に映る。そんなるいがラジオの番組表に並ぶ「英語会話」の文字を見て「まだやってたんや……」と呟く表情に、母を「I hate you」と英語で拒絶した時の冷たさは全く感じられない。安子とともに学んできた英語は、るいにとって安子との絆を示すものだった。その英語で母を拒絶したことをるいは覚えていないのかもしれないが、少しずつ、母への思いがあたたかいものへと変化しているように思う。その変化は、深津のやわらかな視線ややさしい口元に表れている。

 るいはひなたのために本屋へ足を運び、ラジオ英語講座のテキストを探す。その姿に、安子がテキストを探す姿を思い出した。ラジオ英語講座を初めて聴いた安子は稔(松村北斗)からテキストがあることを教えてもらった。テキストを買いに足を運ぶ若かりし頃の安子のワクワクした表情とは違えど、本を探するいの表情もまた、どこか楽しそうに見える。

 劇中で見せる深津の眼差しは、たびたび自分自身を見つめていた。ひなたがテキストに名前を書こうとした時、るいの目にはひなたが幼い頃の自分に映ったのかもしれない。深津は「お母ちゃんが書いたげる」と笑いかける前、ふと思い出したような顔をした。るいは筆記体でひなたの名前を書く。はしゃぐひなたの横で、深津が見つめていたのは娘ではなく、母と自分の思い出だった。母・安子が筆記体で名前を入れてくれたように、るいもひなたの名前を書く。思い出を振り返った後の深津の表情はどこか悲しげにも見えたが、母への気持ちは少しずつときほぐされているはずだ。母とのわだかまりが解消された時、深津はどんな表情を見せるのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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