『カムカム』“I hate you”が必要だった理由とは? 安子編、衝撃の結末に至るまでを聞く

 初代ヒロインである安子(上白石萌音)の物語が衝撃的な形で幕を下ろした『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第38話。

 安子にとって何よりも大切な存在である娘・るい(古川凛)との今生の別れが描かれた。あまりに強烈で鮮烈なシーンゆえ、様々な反響を巻き起こすことも織り込み済みだっただろうが、制作の裏側について聞いてみた。

 制作統括の堀之内礼二郎は「安子とるいの別れをどう描くかということは、このドラマとどう向き合うかというところと同義」だとした上で、「そこに視聴者の皆さんの納得感だったり、逆に納得いかない気持ちだったり、辛い気持ちをどういう風に描けば物語に共感してもらえるかなということをずっと考えてきました」と振り返る。物語の序盤からずっと第38話に待ち受ける“この別れ”に向けての道筋をどう描いていくか、脚本家の藤本有紀と演出の安達もじりとずっと考えてきたのだと言う。

 演出の安達もじりも、第8週の編集作業はこれまでと少し異なる手法を用いたと話す。

「第8週の前半3話分で安子とるいの関係のこじれを一気に見せる必要があり、“1話15分”という制約を一度取っ払い、”45分ドラマ“として組み立て編集するようにしました。その結果、誰が悪いということではなく、ほんのちょっとしたかけ違いの積み重ねがあのラストに繋がったということに私自身納得できた気がします」

 るいからの拒絶と、母娘の別れが描かれた裏で、きぬ(小野花梨)の出産シーンや定一(世良公則)の息子・健一(前野朋哉)の帰還と再会など周囲の人々の幸せもカットバックで差し込まれた。この対比の狙いについて堀之内は、「歓びや不安、悲しみのシーンを同時並行で描くことで、安子とるいの別れがより劇的に感じられたと思います。藤本さんの構想にはうならされました。生と死、悲しみと喜びという正反対の要素が表裏一体となって、この世界はできているんだなと感じました」と語った。

 また、るいが放った決定的なトドメの一言となる「I hate you」については、「大嫌い」ではなく英語の台詞だった必要性をこう語る。

「子どもに“大嫌い”と言われることは、子育て中は珍しいことではなく、親御さんは慣れていると思うんですね。でも、『I hate you』というのは、反射的に出た言葉ではなく完全に“理性”から発せられていますよね。『hate』という単語には“憎む”という意味もあり、それを英語でぶつけられることは日本語の“大嫌い”よりもずっと冷たく、安子の胸に突き刺さったと思います」

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