『スティルウォーター』撮影監督の高柳雅暢が語る 「五感をどうやって観客に伝えるか」

 2022年1月14日公開の映画『スティルウォーター』で撮影監督を務めた高柳雅暢のコメントが到着した。

 本作は、第88回アカデミー賞で作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー監督によるサスペンススリラー。仏マルセイユを舞台に、殺人罪で捕まった娘の無実を証明するため、父親が真犯人を探し出す。

 異国の地で真犯人探しに奮闘するアメリカ人の父親ビル役で主演を務めるのは、『オデッセイ』『ジェイソン・ボーン』『最後の決闘裁判』のマット・デイモン。留学中にガールフレンドを殺した罪で逮捕される娘アリソン役を、『リトル・ミス・サンシャイン』『ゾンビランド:ダブルタップ』のアビゲイル・ブレスリンが演じた。

 マッカーシー監督とは『スポットライト 世紀のスクープ』、『名探偵ティミー』に続く3度目のタッグとなる高柳。本作は2019年8月から9月にかけ、仏・マルセイユと米・オクラホマ州オクラホマシティ周辺のロケ地で撮影され、実際の街並みの色合いや質感、自然や地形などを活かした完全に環境保全型の製作を目指した。監督が思い描く外観と雰囲気を表現するために、スティルウォーターとマルセイユという異なる2つの地域の世界観を正確に描写するよう模索した結果、高柳はオクラホマのシーンではビルの孤独や生活の重苦しさを感じ取れるようにより静止カメラに頼り、マルセイユでは活力に満ちた街を捉えるためにハンドカメラを用い、それぞれの場所で独自のアプローチを行ったという。

 中でも、物語の大半を占める舞台マルセイユでのロケについて「実際の場所で製作を進めることが、常に私に良い刺激を与えてくれました。光、音、感触、匂い、これらの五感をどうやって観客に伝えるか。ロケ地に自分の足で立つことでしか得られない情報があり、それらの感覚を伝えようと試みる上でとても役立ちました」と語る高柳。さらに、高柳は本作中でも最も複雑な一連のシーンのひとつを、マルセイユの代表的なスポットで、昨シーズンまで日本代表の酒井宏樹、長友佑都が所属していたサッカークラブ「オリンピック・マルセイユ」の本拠地スタッド・ヴェロドームにて生の試合中に撮影。「一連のシーンの流れを練るために、トム(監督)と私は何度もスタジアムに足を運び、雰囲気を捉えるためにいくつものカメラを使用しました」と語る。

 そうして街の中に身を置くことを重視し撮影されたシーンの数々は、実際に現地で生活する人々の空気感をそのままに、異国の地に渡り真実を追い求めるビルの物語によりリアリティを持たせた。マッカーシー監督は高柳について、「高柳はシーンの雰囲気作りと独特な質感を表すのがとてもうまいのです。その点で彼と私の美的感覚は完全に一致しました」と称賛を送っている。

 撮影時の高柳の姿をとらえたメイキング写真もあわせて公開された。

■公開情報
『スティルウォーター』
2022年1月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開
監督・脚本:トム・マッカーシー
出演:マット・デイモン、アビゲイル・ブレスリン、カミーユ・コッタン、リル・シャウバウ、イディル・アズーリ
脚本:マーカス・ヒンチー、トーマス・ビデガン、ノエ・ドブレ
撮影監督:高柳雅暢
配給:パルコ ユニバーサル映画
2021年/アメリカ/カラー/デジタル/ビスタサイズ/英語・フランス語/原題:Stillwater/映倫G/字幕翻訳:松浦美奈
(c)2021 Focus Features, LLC.

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