『カムカムエヴリバディ』は甘くて切ないおはぎの味 美都里役のYOUが紡いだ母の真情

 「おいしゅうなれ。おいしゅうなれ」。手のひらの感触を感じて頭を上げると、そこにはるいの顔があった。「美味しいあんこのおまじないじゃ」。あどけない瞳でじっと美都里を見つめるるい。食べ物に優しくすることは食べる人を笑顔にすることと一緒だと思っている孫娘は、おばあちゃんに元気になってほしいと一生懸命、手を当てる。親にとって子どもをなくす悲しみははかり知れない。けれども稔はるいを残してくれた。涙の中にほんのりと甘さを感じ、美都里の顔がほころぶ。

 安子と稔が出会うきっかけになったおはぎを、美都里が呪いたくなったとしても不思議ではない。安子がいなければと考えたこともあった。自分のせいで安子とるいが出て行ったとき、美都里はどれほど後悔しただろうか。身内をなくした悲しみは、子に先立たれた自分だけではなく、両親を失った算太や安子も同じように抱いている。自分には幸いにも勇(村上虹郎)がいて、るいも良い子に育ってくれた。戦時中、砂糖が手に入らず、作ることのできなかったおはぎ。甘さが人を癒すのではなく、人の優しさが甘さを運んでくる。戦争が終わり、美都里はようやくおはぎの味を思い出せるようになった。

 「Merry Christmas」。ロバート(村雨辰剛)が呼びかける。所属する部隊が岡山を撤退することになり、安子に別れを告げに来たのだ。妻をなくしたロバートにとって、おはぎはどんな味だったのだろう? 敵だった国の言葉、音楽、そして人々。誰の上にも等しく雪は降り、クリスマスはやってくる。ロバートは安子に英語の勉強を続けてほしいと話す。「きっとあなたをどこか思いもよらない場所まで連れて行ってくれますよ」。それは新しい日々の始まりを知らせていた。WAR IS OVER。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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