『カムカムエヴリバディ』安子はなぜ英語を学ぶのか 娘・るいの問いに答えられない理由

 昨日である2021年12月8日、あの真珠湾攻撃から80年が経った。1941年に起きたそれをきっかけに、安子(上白石萌音)は稔(松村北斗)を失う。彼と出会って、そして英語と出会って2年後の出来事だった。NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第29話は、そんな安子が英語会話に対して向き合う姿勢を軸に、彼女の抑えきれない本心がようやく吐露される。

 世はクリスマス。私たちの生きるいまと呼応するように描かれるその日を、稔の存在なしで安子は祝うことができなかった。そんな中、再会する米軍将校ロバート・ローズウッド(村雨辰剛)。クリスマスということで街には彼と同じ米軍の人間が、サンタの格好をして子供たちにキャンディを配っていた。子供たちは、嬉しそうに彼らからそれを貰う。終戦後、「カムカム英語」がブームになった背景なども含め、米文化に対する憧れと、“奪われた”敗戦国としての思いが日本中でこんなふうに介在していたのだろう。特にるい(中野翠咲)のような歳の子供にとって、戦争の記憶はない。だからこそ、美都里(YOU)のように「息子を殺した国の文化に触れたくない」という価値観、安子と毎日“楽しく”「カムカム」を聞く日常が彼女に混乱を招いた。

「お母さん、なんで私はカムカム英語を聞きよるん?」

 るいの向けたその問いに、安子は答えられない。なぜなら、自分でさえ理由がわからないからだ。もちろん、彼女の中に“答え”はある。ロバートに招かれた彼のオフィスで、安子はただラジオを聞いているだけでは到達できないレベルの英語力を持っていることを指摘される。そして、そのモチベーション、つまり動機は何かと尋ねられる。そう、安子の持ちあわせていた答えは、“その問い”に対するものだった。「稔」である。

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