『あなたに似た人』が描く“許さないことが復讐”であること ヒジュの夫ヒョンソンに変化も

 本作ではへウォンをはじめ、所々で“許さないことが復讐”であることが描かれている。ヒョンソンはヒジュのことを許すと言ったが、ヒジュに二度と自分の前からいなくならないよう忠告し、へウォンとウジェに仲睦しい夫婦姿をみせつけることが、本当に許したと言えるだろうか。心の底から許したのであれば、束縛もしないだろうし、他人に構うことはないはずだ。また、ヒジュの弟チョン・ソヌ(シン・ドンウク)も同じ立場にいた。ソヌに付きまとうオクス(カン・エシム)という女性は、以前ソヌのことを人殺しだと言っていた。恐らく、ソヌが原因で自分の大切な人を失ったのだろう。彼女もまた許していると口にしながらソヌから離れようとはしない。これも“許さないことが復讐”であることを示している。

 これまでも、ウジェの記憶が戻るきっかけはヒジュだった。その度に、ヒジュが消し去ろうとしている過去の真相が気になっていたのは筆者だけではないだろう。記憶を取り戻すためにアイルランドに向かったウジェが全てを思い出し、どのような行動をとるかは、今後の見どころである。

 そしてついに、テリム財団の理事長であり、権限を握る義母のパク・ヨンサン(キム・ボヨン)にヒジュの秘密を知られてしまった。彼女に知られたからには、ヒジュはアン家から追い出されることが予想される。これで、へウォンの復讐は一旦落ち着いたようにも思える。ウジェに対しても、これまでは記憶が戻ることを恐れていたが、“真実を何も話さないこと”がウジェに対する復讐となり、ウジェがアイルランドに行くことも止めはしなかった。かつて一番憧れていたヒジュと一番大切だったウジェを恨んでいる自分が惨めであることも感じていた。それに、へウォンが通っている“定食とバー”のマスターは、へウォンに考え直すような言葉を度々投げかけてくれている。へウォンのことが気になっているソヌとの関わりも切れたわけではない。第13話の予告では、「奪われたものを取り返す」と今度は記憶を取り戻したウジェが反撃に出る模様。人生を捨てて復讐するへウォン、地獄のような記憶でも取り戻しに行ったウジェ、自分のものは決して手放さないヒョンソン、この3人が見せてきた覚悟を、ヒジュはまだ見せていない。果たして、欲望のまま生きてきたヒジュは、覚悟を持ってウジェを突き返すことができるのだろうか。

■配信情報
『あなたに似た人』
Netflixにて独占配信中
原作・制作:イム・ヒョヌク、ユ・ボラ
出演:コ・ヒョンジョン、シン・ヒョンビン、キム・ジェヨン、チェ・ウォニョン、キム・ボヨン、チャン・へジン、シン・ドンウク、キム・スアン、キム・サンホ、キム・ホジョン
写真はJTBC公式サイトより

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