『あなたに似た人』が描く“許さないことが復讐”であること ヒジュの夫ヒョンソンに変化も

 二人の女性が再会し、裏切りや復讐を重ね破滅に向かっていく、Netflixで配信中の韓国ドラマ『あなたに似た人』。ク・へウォン(シン・ヒョンビン)は、チョン・ヒジュ(コ・ヒョンジュ)に復讐するため、“必要な人”ではなく“大切な人”に標的を変えた。

 今回ターゲットになったのは、ヒジュの息子アン・ホス(キム・ドンハ)だ。へウォンはまたしても自分の手を汚さずに、大切なものを急に奪われる痛みと恐怖をヒジュに味わわせる。以前から自分で直接危害を加えておらず、むしろへウォンが利用した者からはいい人だと思われている。へウォンの元生徒イ・ジュヨン(シン・ヘジ)、ホスを誘拐したジュヨンの父親イ・イルソン(ソ・ジンウォン)、誘拐されたホスも彼女を頼り、優しい人間だと信用していた。立場的にもこれ以上敵を増やせないへウォンは、周りを味方につけてヒジュ側の攻撃を少しでも避けていたようにもみえる。また、この一件の中で「子どもが消えてしまう辛い気持ち、私もわかります」「誕生日の前に死んだ子も多い」と言ったへウォンの発言に違和感を感じなかっただろうか。へウォンが奪われたものは他にもあり、闇はまだ深いことを感じさせる。しかし、今回の事件で完全に一線を越えてしまった復讐は、どこを終着地とするのか胸のざわつきは止まらない。

 人は何をきっかけに変貌してしまうのかわからないものである。第11話〜第12話にかけて変貌したのは、ヒジュの夫アン・ヒョンソン(チェ・ウォニョン)だった。ついに、ウジュとの関係をヒジュに問い詰めたのだ。5年間も二人の関係に目をつぶってきたのになぜ今になって怒りをあらわにすることになったのか。それは、知りたくなかった事実、あるいは避けていた事実を自分の目で確かめてしまったからだろう。へウォンが仕込んだ赤ん坊のホスを抱いたヒジュとウジェが写った写真にまんまとヒョンソンは心を取り乱すことになり、いつものようにすべて知らないふりをすることはできなかった。だけども、ヒジュが夜遅い時間に家にいないことで、部屋着のまま家を飛び出しウジェのアトリエに車で駆けつけるようなヒョンソンは、へウォンの言う通り、やっと人間らしくなったのかもしれない。

 昔も今も変わらないのはヒジュだ。ヒョンソンに写真を突きつけられ、まるで準備された台本に並べられたような完璧な言葉で謝罪をしたヒジュ。ここで、夫のイ・ヒョンギ(ホン・ソジュン)から暴力を受けている義姉アン・ミンソ(チャン・ヘジン)が「彼は過ちだと自覚しているから普段は優しい」とかばったことに対し、「それは捨てられるのが怖いからで卑怯なことだ」とヒジュが言い返すシーンが思い浮かばれる。まるで、ヒジュの奥底にある気持ちをヒョンギの過ちに重ねて言っているように聞こえる。

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