『アバランチ』福士蒼汰、正義の間で引き裂かれる 靴についた泥が示すそのありか

 一方で本作の原点である「Episode0」が明らかにしたのは、一見すると直情的な言葉の中にも正義は宿るということだった。下請けから不当なリベートを受け取った発注元の社員にひるまず挑んだあかり(北香那)は、理不尽に対する正義の存在を知らせていた。そのあかりが言った「靴がきれいな刑事なんてろくな奴じゃない」という言葉は西城が抱く疑問への回答になっており、守るべきものが何かを示していた。仕事で靴を泥だらけにして帰ってくる尚也に憧れていた西城は、「立場が違えば正義も変わる」という父の言葉を受け入れることができない。むしろ、それは変わってしまった父親の姿を映しているように思える。その父の息子である自分はアバランチにいてもいいのだろうか?

 斜めになったAのように、2つの異なる正義の間で引き裂かれる西城は私たちの代弁者でもある。そんな西城に羽生が投げかけた「自分の正義は自分で決めてよ」。自分が立っている場所は自分で決めていいという言葉は、正義が立場によって決まるものではないことを示していた。正義があるとするなら、それは踏みしめる地面の方にではなく、今を生きる一人一人の中にしかない。大事なのはぬかるんだ道を歩き通す覚悟があるかどうか。靴についた泥は、混沌とした現実社会にあって正義がどこにあるかを指し示している。

 覆面を自らはぎとり、波乱の展開に突入する『アバランチ』。「負けたまんまじゃ終われない」というあかりの言葉が一筋の希望になることを願う。

■放送情報
『アバランチ』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、福士蒼汰、千葉雄大、高橋メアリージュン、田中要次、利重剛、堀田茜、渡部篤郎(特別出演)、木村佳乃ほか
監督:藤井道人、三宅喜重(カンテレ)、山口健人
音楽:堤裕介
主題歌:UVERworld(ソニー・ミュージックレーベルズ)
プロデュース:安藤和久(カンテレ)、岡光寛子(カンテレ)、笠置高弘(トライストーン・ピクチャーズ)、濵弘大(トライストーン・ピクチャーズ)
制作:カンテレ、トライストーン・ピクチャーズ
(c)カンテレ
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