『おっさんずラブ』から『恋する寄生虫』まで 林遣都の演技の“味わい深さ”を紐解く

 これまで林はお笑い芸人、ヒロインの良き理解者となる同級生、エリート営業マン、刑事と様々な役柄を演じ分けてきたが、強い意思を感じさせるつぶらな瞳がいつも印象的だ。

 そんな林が三秋縋による小説を原案とする『恋する寄生虫』では、その力強い眼差しを封印。極度の潔癖症で人と関わることを避けて生きてきた孤独な青年・高坂賢吾に扮している。

『恋する寄生虫』(c)2021「恋する寄生虫」製作委員会

 8歳の時に両親が自殺を遂げて以来、1人で生きてきた高坂は、何度洗っても手に赤カビのようなものが這い上がる症状に悩まされていた。潔癖症のため外出する時はマスク、手袋、帽子で完全防備する彼は人生に絶望し、彼を孤独に追いやる社会に復讐するため世界を破滅させる計画を進めている。一方、視線恐怖症の佐薙ひじり(小松菜奈)もまた、人目を避けて生きてきた。実は彼女の頭の中には“虫”がいて、ほどなく脳を喰いつくされて命が終わってしまうのだ。そんな特異体質の2人がひょんなことから出会い、急速に惹かれ合う。しかし“虫によって人が恋に落ちる”ことが判明し……。

 林はアブない思想を抱える高坂の焦燥感や諦念を、感情を排除したうつろな表情を貼りつかせることで切なく表現。ユニークなファンタジーである本作において、 “社会の生きずらさ”に焦点をあてた役柄のアプローチをすることで、難しい時代を生きる我々が共感できるリアルな物語に昇華させた。やっかいな問題を抱える2人にどんな未来が待ち受けているのか? 最高にピュアで美しいラブストーリーを、林遣都の味わい深い演技とともに堪能してみてはいかがだろう。

■公開情報
『恋する寄生虫』
全国公開中
出演:林遣都、小松菜奈、井浦新、石橋凌
監督:柿本ケンサク
脚本:山室有紀子
原案:三秋縋『恋する寄生虫』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA
制作プロダクション:松竹撮影所
製作:「恋する寄生虫」製作委員会
(c)2021「恋する寄生虫」製作委員会
公式サイト:https://koi-kiseichu.jp/

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