『カムカムエヴリバディ』段田安則×甲本雅裕の名演光る 制作統括に撮影の裏側を聞く

 “朝ドラ”、特に大阪制作の作品には、登場人物たちが食べる料理が非常に印象的なものが多い。現在放送中の『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)もその例に漏れず、ヒロイン・安子(上白石萌音)の実家である橘家、安子が恋する稔(松村北斗)の実家・雉真家の食卓シーンは、思わずお腹が空いてしまうだけでなく、それぞれの家族の在り方、背景を知る上でも重要な役割を担っている。

 橘家と雉真家、御菓子屋と繊維業者と事業も違えば、家族の雰囲気もまったく異なる両家が、“父”を通して向き合ったのが第14話だ。

 第14話のメイン舞台となったのは、御菓子司「たちばな」。息子・稔が好意を寄せる相手である安子とは一体どんな人間なのかを探るため、千吉(段田安則)が「たちばな」を訪れる。

 雉真家の今後、そして稔の幸せを思うからこそ、安子との交際に反対していた千吉だったが、安子の人柄、金太(甲本雅裕)を通して見えた「たちばな」が積み重ねてきたものを感じ取り、考えを改めるのだった。

 安子を演じる上白石萌音が相変わらず素晴らしいのはもちろんだが、なんと言っても第14話は2人の父、段田安則と甲本雅裕の名演が光った。制作統括の堀之内礼二郎は2人の芝居について、次のように語っている。

「段田さんも甲本さんも入念な準備をされてきたのがリハーサルの段階からすぐに伝わりました。出入りの動きが多いシーンなのですが、最初に芝居を合わせた瞬間からわかり合っている雰囲気で。「たちばな」でのシーンは、店主である金太が、途中で客である千吉の横に座ります。つまり、父同士、経営者同士として対等な関係になるわけです。甲本さんは特にそのタイミング、動き方は演出と相談しながら大事にされていました。おふたりとも役として生きつつ、その場に生まれた空気感まで伝えられる素晴らしい役者さんです」

 2人の会話の中で、「たちばな」はおしるこ、「雉真繊維」は足袋というそれぞれの“原点”についての話が繰り広げられる。『カムカムエヴリバディ』は作品の主題でもあるラジオをはじめ、多くの“原点”を大事にしていると堀之内は続ける。

「第1話が日本初のラジオ放送、そしてヒロイン・安子の誕生から始まっているように、脚本の藤本(有紀)さんは、『何かが生まれる/始まる瞬間=原点』を大事にしているんだなと感じます。環境がまったく違う千吉と金太の気持ちがどこか通じ合うことができたのも、2人が“原点”を知っている人間としての共通点があるからなんじゃないかと。「たちばな」が江戸時代から続くような老舗店ではなく、金太の父・杵太郎(大和田伸也)から始まった店であること、『雉真繊維』も千吉が築き上げた会社であるということは非常に大きな意味があると思っています」

 死を直接的に描かない作品も多い中、本作では杵太郎の死がはっきりと描かれた。『カムカムエヴリバディ』では、生の喜びと同時に、死に対しても正面から向き合っていくと堀之内は語る。

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