『ハンオシ』倉科カナ演じる美晴の“こだわり” 明葉と百瀬との同棲生活もスタート?

 明葉(清野菜名)からのハグを“友情のハグ”と勘違いし、初めて出来た女友達の存在に舞い上がる百瀬(坂口健太郎)の意外な姿が見られた『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系、以下『ハンオシ』)第4話。

 一体どんな学生時代、社会人生活を過ごしてきたのだろうかと思わずにはいられないほどの喜びようを見せる百瀬。今までの彼なら鼻で笑ったり、軽く聞き流していたに違いない「幸せは誰かと分かち合えば2倍になる」なんていう舛田部長(岡田圭右)の言葉も、今の彼には素直に響くようで、そのまま鵜呑みにして、兄夫婦との箱根旅行まで計画してしまう。

 これまでも本当は憧れていたけれど自身のキャラクターや“見え方”を気にするあまり、諦めてきたことや、その輪に入ることができなかった経験を百瀬は人知れず重ねてきたのだろう。それにしても、あまりに彼は目に見える“形”ばかりにこだわりすぎているようにも思える。だからこそ、兄の妻・美晴(倉科カナ)への一方通行な想いを悟られまいと、あくまで形式的な結婚をすることにこだわり、そうまでしないと自身の気持ちの置き場を見出せないのだろうし、その美晴がこれまでとは違う顔を覗かせると一気に動揺するのだろう。

 明葉がかなりの自制心の持ち主であるからこそ成り立っている共同生活であって、百瀬は一歩間違えれば“メンヘラ製造機”にもなりかねない。明葉も大金が必要だったためギブ&テイクが成立しているとはいえ、百瀬のかなり個人的な理由で偽装結婚をし、厳格な掟を敷いたにもかかわらず、女友達認定するなり、それを破ってくるのは、なかなかに都合が良すぎるとも言える。だけれども、いきなり無防備な笑顔を見せる百瀬の様子に悪気がないのは明らかで、あんなに嬉しそうにされると憎めないし許してしまう明葉の気持ちも痛いほどわかる。むしろどこか喜んでいる自分の本心にも気づき、そしてそれが同時に叶わぬ不毛な恋の入り口だという危険を本能的に察知しているからこそ、避けてしまったり、改めて厳密な線引きを設けようとしてしまう。そんな明葉の忙しない気持ちを思うと、既に身が保たなさそうだ。そんな明葉に追い討ちをかけるような“形式上”の結婚指輪がまた切ない。

 そして、実は同じように“形”に異様なこだわりを見せるのが、美晴だ。幼少期、両親の帰りが遅く、寂しい思いをしたという彼女は、“賑やかで仲の良い家族像”に人一倍強い執着を見せる。「完璧な家族を作れる」「綻び一つない理想の家族を」という思いから、自分と同じ匂いのする百瀬ではなく、正反対のタイプの兄・旭(前野朋哉)を結婚相手に選んだのかもしれない。

 ただ、「綻びみたいなのが出来たとしても、つぎはぎだらけでも一緒にいられるだけで幸せ」という旭のことが、全てのパーツが揃わないと気が済まない(という半ば強迫観念に近いものに駆られているかのような)美晴にとっては歯痒く焦ったくも思える一方で、あまりに大きすぎる愛情に包まれると、十分すぎるその環境に満足できず“不足”ばかりに目がいく自分に嫌気が差すのかもしれない。旭の見返りを求めない愛情に触れる度、ある種打算的に結婚を決めた自分の計算高さが際立ち辟易してしまう場面もあるのかもしれない。

 「誰かを好きになるって勝手なことなんですよ」とは明葉の言葉だが、これは言い得て妙である。誰かに好意を寄せると勝手なイメージを膨らませてしまい何かを期待してしまうし、もっと相手を知りたい、近づきたいと思ってしまう。そのイメージに反する言動を見聞きした時には勝手に傷ついてしまう。また相手の幸せを願ってしまうが、こちらが思う“幸せ”を相手が望んでいるとも限らない。

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