及川光博が明かす『最愛』“ブキミッチー”の演出 鼻血シーンはデヴィッド・リンチを意識?

 ドラマ『最愛』(TBS系)の第5話では、梨央(吉高由里子)と弟の優(高橋文哉)が帰郷し、その先で刑事の大輝(松下洸平)と桑田(佐久間由衣)に引き離されてしまった一方で、もうひと軸、気になるストーリーが展開されていた。拉致されて車のトランクに入れられていた記者の橘しおり(田中みな実)を後藤専務(及川光博)が救出する、という一幕だ。

 「真田ウェルネス」の社長の座を奪われてから梨央をマークするため、情報屋(優/高橋文哉)に見張らせ、橘記者に情報提供をしてきた後藤。まだ謎に包まれる後藤専務役を演じる及川光博にキャラクターの背景や、今後の後藤専務の行く末について、話題の“鼻血シーン”について話を聞いた。

『グランメゾン東京』での塚原あゆ子監督との縁

――『最愛』の出演を決めた理由は何ですか?

及川光博(以下、及川):プロットを読んだときに、残酷な事件とロマンスの融合に惹かれて、それを見てみたいと思ったんです。そして決定打は塚原(あゆ子)監督とご一緒できることでしたね。2019年の『グランメゾン東京』(TBS系)で初めて一緒にお仕事させていただいて、その現場がノンストレスで楽しい思い出しか浮かばないくらい。打ち上げパーティーの時に、ぜひまたご一緒したいですとお伝えしたんです(笑)。そしたら、このチャンスが来て、これはもうご縁だなと思いました。『グランメゾン』のときの料理人の相沢とは全く違うキャラクターなので、どう料理していただけるか楽しみにしていました。

――後藤専務のキャラクターの背景をどのように考えていますか?

及川:後藤は第4話冒頭のモノローグで端的に表れているように、孤独で、会社が大好きな人間です。おそらく、完璧主義で人を信用していないんじゃないかな。ただ、最近僕がちょっと気になっているのは、梓社長(薬師丸ひろ子)に対しての感情は、ちょっとスペシャルなんじゃないかと考察しています。梓さんに対しては、ふと人間的な表情を見せることがあるのかなと、でも、まだそこは……さぁどうなんでしょうか?

――気になります(笑)。いつもポーカーフェイスな後藤ですが、演じる上で特に意識していることは?

及川:表情筋を極力使わず、身振り手振りも封印しています。動かないからこその感情表現を意識していますが、そこが難しくもあり、楽しくもあり。見た目で言うと、メイクさんが不気味な存在感を出すために、かなり細かくキャラクターデザインをしてくれています。前髪をにわざとうねらせて整髪料で嫌なツヤを出して、気持ち悪さを演出しています(笑)。

――後藤の対立関係となる梨央を吉高由里子さんが演じていらっしゃいますね。

及川:吉高ちゃんは天才です。本番前は、スタッフや出演者とキャッキャ談笑しているのですが、いざ本番となったときの演技が素晴らしくて。何度かそういったオンオフの切り替えを目の前で見たのですが、とても驚きました。

ーー井浦新さんはいかがですか?

及川:井浦さんはマイペースで、学者肌といいますか、物事の掘り下げ方が深い方だなと思います。基本、ニュートラルでいて、自分で自分の色を決めない感じ。だからこそいろいろな役柄にハマるんだろうなと思います。

――橘記者役の田中みな実さんはいかがですか?

及川:がんばり屋さんだと思います。集中力がすごい。楽屋でご挨拶をする時はもちろん朗らかに、笑顔でお話しするんだけど、現場に入ったら、ずっと役のままです。セルフプロデュースできる方ですから、意識を抜本的に変えているんだと思う。

――『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』(日本テレビ系)でも共演されていた松下さんとの再共演はいかがでしょう?

及川:洸平は珍しく僕になついてくれる後輩なのに、全然絡むシーンがなくて残念です(笑)。人の目を見て、ちゃんと話を聞く子でいいやつなんです。でもこの前すれ違ったとき、前に共演した時と比べて、日焼けして肌が黒くなってるし、なんかちょっとムキッとしてるし、マスクしてたから、最初誰だかわからなかった(笑)。

――鼻血のシーンの反響はございましたか?

及川:みんな鼻血の話題が大好きですね(笑)。少なくとも家族は大変喜んでいましたよ(笑)。とにかく、画的にインパクトがあるので、少しでも爪痕を残せたという点では出してよかったです(笑)。というか、この話はクランクインして早いうちに監督から相談されていて。もちろん、全く問題ないです、と。本番では、何度もやれるシーンではないので、“全集中・鼻血の呼吸”で出しました(笑)。

――生涯初めてですか?

及川:鼻血シーンは昔、クドカン(宮藤官九郎)の昼ドラ『吾輩は主婦である』(TBS系)でありましたね。無表情でいるというところが、多分刺さっているんでしょうね。『ツイン・ピークス』などのデヴィッド・リンチ的な不条理というか、シュールな映像を個人的には意識した鼻血シーンでした。

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