『おかえりモネ』鈴木京香×内野聖陽×蒔田彩珠×藤竜也、演技巧者たちが織りなす家族の絆

 百音(清原果耶)のコミュニティFMが地元の人たちの生活にすっかり馴染んできた頃、百音だけでなく百音の家族も、それぞれに変化の時を迎えようとしていた。『おかえりモネ』(NHK総合)第21週「胸に秘めた思い」では、百音の母・亜哉子(鈴木京香)のこれまでの苦悩と小学校教師を辞めた理由が明かされた。百音の妹・未知(蒔田彩珠)も大学で研究の道に進むか、地元で今まで通り仕事を続けるか、人生の岐路に立たされている。

 百音の祖父・龍己(藤竜也)はカキ棚の修理をしないまま、永浦水産を自分の代で終わりにしてもいいと家族に伝えたが、亜哉子も未知も自分のやりたいことよりもカキ棚を守ることを優先するという強い意志を示した。百音自身は父親似だという自覚があるが、父・耕治(内野聖陽)は若い頃に仙台の大学に通い、音楽に夢中になり、銀行に就職したため、龍己の跡継ぎにならなかった。故郷を離れ、自分のやりたいことを見つけて仕事にできたのは、百音も同じである。

 人は自分のないものを持つ相手に惹かれるという。亜哉子は耕治の明るい人柄に魅力を感じ、開放的な永浦家の雰囲気と島の暮らしに憧れて耕治と結婚した。亜哉子を演じる鈴木京香は公式サイトのインタビューで「亜哉子ってやっぱり、根っからの『明るく天真らんまんなお母さん』ではないんですよね。耕治さんとのなれ初めのシーンで、実は永浦家のような明るい家庭で育ったわけじゃないという裏設定が出てきたり。震災でも、亜哉子は亜哉子なりに傷ついたり、悲しい思いをしてきたりしている」と語っている。

 認知症になった雅代(竹下景子)の介護を苦にしていた様子もなく、アルコール依存症に苦しんでいた亮(永瀬廉)の父、新次(浅野忠信)の病院通いや身の回りの世話なども率先してやっていたのが亜哉子だ。面倒見がいいだけでなく、過去につらい経験があるからこそ寛容で誰かを責めることなく、自分の努力を続けられる人なのかもしれない。

 そんな責任感が強く、人と接することが好きな亜哉子は小学校教師という職業に誇りを感じていただろうし、転校していった石井あかり(伊東蒼)が慕っている様子からも素敵な先生だったことが伝わる。亜哉子は、自分が守りたいものを優先させて生きてきた人なのだ。自己犠牲というよりも、自分にとって大切だから必死に守りたいという本能に従って生きているようにも感じられる。

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