『平家物語』で名タッグ再び 山田尚子×吉田玲子が描いてきた心情描写の妙
先日発表されたTVアニメ『平家物語』がアニメファンの間で大きな話題となっている。
本作はフジテレビのアニメ放送枠「+Ultra(プラスウルトラ)」にて2022年1月より放送予定。映像・電子書籍配信サービス「FOD」ではテレビ放送に先駆けて、9月15日より先行独占配信が決定している。
とりわけアニメファンにとって衝撃だったのは、これまで京都アニメーション(以下、『京アニ』)に所属し、京アニ作品のみに関わってきたアニメーション監督・山田尚子が、サイエンスSARUとタッグを組んで本作を制作することだ。
一方脚本は、これまでの山田尚子監督作品でも担当してきた吉田玲子。『平家物語』でもこのタッグは続投だ。作画のテイストや時代設定など、山田の過去作とは異る部分もありそうではあるが、根っこのところでは通底する魅力が味わえそうだ。
本稿では、監督・山田尚子と脚本・吉田玲子のタッグが生み出してきた作品世に出た作品たちを、『平家物語』への期待を込めて振り返っていこうと思う。
山田の監督デビュー作は、かきふらいの原作コミックをアニメ化した、言わずと知れた大ヒット作『けいおん!』(TBS系)。軽音部(軽音楽部)に所属した女子高生たちの緩い日常をコメディタッチで描く本作は、その演出的な魅力と京アニによる作画が組み合わさり映像の質も極めて高い。近いコンセプトを持ったアニメが数多く生まれた現在においても、突出した作品と言えるだろう。
2009年にTVアニメ第1期『けいおん!』、2010年にTVアニメ第2期『けいおん!!』が放送されたあと、2011年には山田にとって初の劇場作品『映画けいおん!』が上映される。ロンドンへの卒業旅行を描く本作では、開放的な空間を使った密度の高い画面構成が多く見受けられ、TVシリーズからスケールアップした物語に見合った映像が楽しめた。
『けいおん!』シリーズの魅力を踏襲しつつ、監督・山田尚子にとって初のオリジナル作品として昇華したのが2013年の『たまこまーけっと』だ。『けいおん!』でも見られた少女たちの緩い日常という見どころはそのままに、本作では商店街を舞台にしたことで、年齢も境遇も多様な人々の人生が交わる暖かなドラマが紡がれていった。
これ以降、山田は従来どおり京アニのTVアニメ作品には各話ごとの絵コンテ・演出で参加しつつも、監督としては劇場作品に特化した映像作家としての道を歩んでいく。