『映画大好きポンポさん』『漁港の肉子ちゃん』 多種多様な作品揃うアニメ映画の現在地

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『漁港の肉子ちゃん』

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(c)Project Revue Starlight

 そして『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』と『漁港の肉子ちゃん』はアニメ表現の強みをより先鋭化させた印象だ。

 『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は、人気テレビアニメシリーズの完結作だ。宝塚を思わせる歌劇団を舞台としており、そこで少女たちが他のキャラクターたちとの交流と確執を抱えながら成長してく様を描く。舞台を愛する少女たちという点を最大限に活かし、ケレン味のあるアニメ表現、そして映画のスクリーンを舞台に見立てる映像演出と歌劇が一体となった時の高揚感が気持ちいい。キリンやトマト、東京タワーなどの描写に寓意的な意味が何重にも施されたメタファーが多く含まれ、様々な受け取り方が可能な考察しがいのある絵作りなどの挑戦的な姿勢がシリーズファンを中心に高く評価されている。

『漁港の肉子ちゃん』(c)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会

 『漁港の肉子ちゃん』はスタジオジブリ作品のような優しい世界と柔らかなアニメ表現が特徴的だ。太った肉子ちゃんの脂肪が動くような仕草からは、可愛らしさが伝わってくる。その作風からは童話のような優しさを感じさせる。地方の町並みや自然描写からは、どことなく懐かしいような気分に陥る観客も多いだろう。

 今回挙げた6月に公開された6作品全て、アニメだからこそ表現できるものに溢れていた。それでいながらも、それぞれの魅力が全く被っておらず、別々の方向性で尖った作品たちとなっている。テーマやジャンルだけでなく、表現手法も魅力も異なる作品たちが6月公開の作品たちだけでも集まっている。

 そして7月には海外のクリエイターも多く起用している細田守監督作『竜とそばかすの姫』や、鈴木英仁などの80年代ポップ風の美術やシルエットの『サイダーのように言葉が湧き上がる』も公開される。これらの作品もアニメの強みを活かし、上記の作品たちとはまた違う尖った魅力を内包している。日本アニメの多様な表現手法の数々について、改めて注目してみると多くの発見があるのではないだろうか。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。Twitter

■公開情報
『映画大好きポンポさん』
全国公開中
声の出演:清水尋也、小原好美、大谷凜香、加隈亜衣、大塚明夫、木島隆一
原作:杉谷庄吾【人間プラモ】(プロダクション・グッドブック)『映画大好きポンポさん』(MFC ジーンピクシブシリーズ/KADOKAWA刊)
監督・脚本:平尾隆之
キャラクターデザイン:足立慎吾
制作:CLAP
主題歌:「窓を開けて」CIEL(KAMITSUBAKI RECORD)
挿入歌:「例えば」花譜(KAMITSUBAKI RECORD)/「反逆者の僕ら」EMA(KAMITSUBAKI RECORD)
配給:角川ANIMATION
(c)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会
公式サイト:https://pompo-the-cinephile.com/

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