『るろうに剣心』『閃光のハサウェイ』 相次ぐ世界配信で日本関連作品の配給戦略が激変

 そして、7月1日にはAmazon Prime Videoが『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』(2021年、英題:Evangelion: 3.0+1.01 Thrice Upon a Time)を、8月13日より日本を除く世界で、27言語の字幕版、英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語の吹替版を配信開始すると発表した。

 北米ではテレビシリーズの『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年~96年、英題:Neon Genesis Evangelion)と映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997年、英題:The End of Evangelion)と『DEATH (TRUE)2/ Air/まごころを、君に』(1998年、英題:EVANGELION:DEATH(TRUE)2)の2作品はNetflixにて配信中。最新作と同時に、新劇場版の3作品も日本以外の世界各国のAmazon Prime Videoで初配信になる。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、アメリカの劇場公開映画のストリーミングを含むホーム・エンターテインメントのウィンドウ(移行期間)を半永久的に変えてしまった。以前は、各スタジオ・配給会社と劇場との間で劇場公開から3ヶ月間のウィンドウが不文律として設定されていたが、パンデミックによって米国内の映画館がおよそ1年間にわたって閉鎖されていた間に各社はそれぞれのウィンドウ戦略を立て実行した。例えば、ユニバーサル・ピクチャーズは劇場からプレミアム・ビデオ・オン・デマンド(PVOD)移行への期間を最短17日間に短縮し、劇場にも利益還元を行う。ディズニーは作品によって劇場公開とPVODを併用し、ワーナー・ブラザース映画は親会社のストリーミングサービスHBO Maxで劇場公開と同時に1ヶ月間限定で配信する(参考:米映画産業、ディズニーの再編計画はパンドラの箱? スタジオの劇場所有をめぐる独占禁止法撤廃の動きも)。

 アメリカで制作されたハリウッド映画がそのような状況にあれば、インディペンデント系映画や外国語映画などのニッチな作品も例外ではない。観客層が限定されるそれらの作品は映画館での上映とPVOD(有料配信)の同時公開か、ストリーミングサービスでの配信に踏み切ることが多かった。異例の劇場のみ公開を貫いたのが、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。4月23日の公開以来4,770万ドル(約53億円)の興行成績を挙げ、2021年度の興行成績ランキングの9位に入っている(※7月6日現在)(参考:『鬼滅の刃』北米でも記録を塗り替える大ヒット! その要因は“データ”にあり?)。

 『るろうに剣心』はアジア諸国を除き海外配給の実績がほぼないのにもかかわらず、Netflixの世界ランキングで上位に食い込む好成績を納めている。これは、過去『るろうに剣心』のアニメシリーズや映画版が世界各国で観られてきたことが大きく、たとえ実写版の俳優に馴染みがなくても世界観を共有しやすいことが要因だと思われる。こうした作品の場合、各国で都度公開戦略を立てる劇場公開よりも、瞬間的な拡散力のある世界配信の方が効果を得やすい。これは、シリーズとして歴史のある『機動戦士ガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』にも言えること。日本映画実写作品の海外展開は映画祭で評価されるような作品以外は劇場公開もままならず苦戦する状況が続いていていたが、『るろうに剣心』のデータからは、順位以外の様々な考察や今後の課題が読み取れるはずだ。

参考

・https://flixpatrol.com/title/rurouni-kenshin-the-final-2021/top10/
・https://variety.com/2021/streaming/asia/evangelion-thrice-anime-movie-to-amazon-prime-video-1235009631/
・https://gizmodo.com/the-final-evangelion-movie-is-finally-coming-to-the-wes-1847211445
・https://www.boxofficemojo.com/year/2021/?ref_=bo_yl_table_1

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■公開情報
『るろうに剣心 最終章 The Final』
全国公開中
出演:佐藤健、武井咲、新田真剣佑、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、土屋太鳳、三浦涼介、音尾琢真、鶴見辰吾、中原丈雄、北村一輝、有村架純、江口洋介
原作:和月伸宏『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督・脚本:大友啓史
音楽:佐藤直紀
主題歌:ONE OK ROCK「Renegades」
制作プロダクション・配給:ワーナー・ブラザース映画
製作:映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会
(c)和月伸宏/ 集英社 (c)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会
公式サイト:http://rurouni-kenshin.jp
公式Twitter:https://twitter.com/ruroken_movie
公式Instagram:https://www.instagram.com/ruroken_movie/

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