『スーパーマン』のリチャード・ドナー監督死去 『グーニーズ』チャンク役も追悼コメント

 『グーニーズ』や『スーパーマン』、『オーメン』など今日まで人々に愛されてきた数多くの名作を生み出した映画監督のリチャード・ドナー(リチャード・ドナルド・シュワルツバーグ)が7月5日(現地時間)、米ロサンゼルスにて亡くなった。91歳だった。先日、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)でも放送され多くの人にとって記憶に新しい『グーニーズ』であるが、その監督の死去に伴いチャンク役のジェフ・コーエンがドナーの死についてVariety誌に胸の内を語っている。

「ディック(リチャード)・ドナーはこの世界の中で大好きな人でした。私がこれまで出会ってきた中で最高の人です。類稀なる才能を持ち、とても親切で、誰からも愛される、そしてアーティスト。それが、ドナーでした。映画史の中で最も素晴らしい監督の一人です」

 彼の『スーパーマン』は、スーパーヒーロー映画ジャンルを切り拓いた。ティム・バートンの『バットマン』も、マーベル映画も、ドナーの『スーパーマン』がなければ存在しなかったと言うコーエン。『グーニーズ』はもちろん、映画史に残るもっとも素晴らしいホラー映画の一つ『オーメン』も彼の作品だ。加えて、クリスマス映画の中でもっとも知られている作品の一つでもある『スクルージ』、素晴らしいアクション映画の類として知られる『リーサル・ウェポン』シリーズもドナーが手がけたもの。こんなに全てのカテゴリーにおいて、ここまでの功績を残した監督が他にいるだろうか。

「そして一個人として、ディックは私にとても親切でした。私は今、エンターテインメントにおける弁護士をしていて、ロサンゼルスにオフィスを持っています。しかし、これらも全てドナーが私を助けてくれなければ実現しなかったことです。私にとって、この業界ではそれは珍しいことなんです。ディック・ドナーとローレン・シュラー・ドナーが親切で、私の大学費用を払ってくれたおかげでバークレー大学に通うことができました」

 そう、実はドナーはコーエンがもっとも助けを必要としてきたとき、いつも快く彼をサポートしていたのだ。

 話はコーエンの俳優としてのキャリアが停滞してきた頃に遡る。俳優としての仕事がなくてもショービジネスの世界が好きだった彼を、ドナーは自分のプロダクションアシスタントとして雇ったそうだ。このおかげでコーエンは一時期ワーナー・ブラザースにて、彼の元で働いていた。そして彼が大学に出願しようとした時、ドナーに大学の推薦状を書いてほしいと頼む。ドナーに「自分が何を書くべきかノートにまとめてほしい」と言われたコーエンは、自分のこれまでの人生、特に幼少期の苦労について書いた。彼の父の不在や、子役時代の問題についてを。すると、ノートを読んだドナーはコーエンに電話し、推薦状を書く代わりに奥さんのローレンと一緒に彼の大学費用を払うと言ったのだそうだ。

「とにかく驚きましたよ。立っていられませんでしたね。なぜなら、大学費用の支払いも問題の一つとしてあったから。このことが私の人生を変えました。経済面だけでなく、ディックとローレンが自分を信じてくれたということが。彼らが、私が自分自身で何かできる人間だと信じてくれたことが。親切で、共感的で、見返りを求めずに人助けをする……それがドナーという人でした」

 コーエン曰く、ドナー自身は最も才能があり、部屋の中で最も頭のいい人物でありながらも、それをひけらかすことなく、周囲の人間全員にスポットライトがあたるようしていたという。その人柄の良さ、才能と映画史における貢献は計り知れない。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■作品情報
『グーニーズ』
監督:リチャード・ドナー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、フランク・マーシャル、キャスリーン・ケネディ
脚本:クリス・コロンバス
出演:ショーン・アスティン、コリー・フェルドマ、ジョシュ・ブローリン、ジェフ・コーエン、キー・ホイ・クァン
(c)Warner Bros. Entertainment Inc.

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