『おかえりモネ』坂口健太郎演じる菅波から目が離せない 百音は新商品の開発に着手

 山から海。そして海から山へ。『おかえりモネ』(NHK総合)第5週はふたたび登米が舞台。百音(清原果耶)が就職した森林組合は、地域の林業の担い手として様々な事業を手がけている。第22話で百音は新商品の開発を任されることになった。

 恒例になりつつある森林組合の食事風景。食卓に並ぶのは百音が持ち帰った気仙沼のカキだ。川久保(でんでん)が立ち上がって吠える。「水と空気はタダじゃねえんだ!」。実は丸太の入札があって安く買いたたかれたばかりだった。直径20センチ、40年かけて育てても1600円。買い手がつかないこともある。林業が立ち行かない現状をまざまざと見せつけられた。

 「海の人たちも頑張ってんだねえ」とみよ子(大島蓉子)。サヤカ(夏木マリ)が「でも、うちら山の人間のふんばりも忘れてもらっちゃ困るんだけどねえ。山がきれいな水と空気作ってっから、だから海だってちゃんと戻る」と続け、川久保がそれを受ける。

「いやあ本当、世の中の人はわがってねえですよ。山の偉大さを。林業の大切さを」

 「タダじゃねえんだ」につながる一連のやり取りから、山に生きる人々のプライドが垣間見えた。1個300円で出荷するカキをうらやむ一方で、「モネんちの海のじいさんがそれだけ努力してるって証しだよ」(サヤカ)と漁業の努力も認める。震災から3年を経て、ようやくここまで盛り返したことを知っているからだ。そんなサヤカは誰よりも危機感を抱いていた。いつになく真剣な表情で「知恵絞って金稼がなきゃ、林業は本当に消えるよ」と話す。

 サヤカは広葉樹を使った新事業を提案する。使い道のないナラやクヌギを商品化し、収益を上げようという意図だ。商品開発の担当に指名されたのは百音。18歳の新人に林業の未来が託された。皆の気持ちが林業に向いたタイミングで新規事業に打って出る。機会をとらえて逃さないサヤカのリーダーシップが印象的だった。

 大人数のにぎやかな食卓では箸が進み、話が弾む。本音が飛び出す食卓は、親睦を深めるとともに貴重な意見交換の場でもある。交代勤務で東京に戻る医師の中村(平山祐介)は、菅波(坂口健太郎)に訪問診療を持ちかけるが、菅波は「治す医療にこだわりたい」と塩対応で返す。中村との間に何があったのかと心配になるが、そういえば菅波は百音に対してもそっけないし、さしあたりこういう人なのだと納得する。それでも食べていないカキに「ごちそうさま」と言うあたり律儀な性格ではあるのだろう。目が離せないキャラである。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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