宮世琉弥が体現するねじれた愛情 『珈琲いかがでしょう』青山はぼっちゃんを救えるのか

 青山がいなくなり、父親は組同士の抗争で亡くなり、その噂が学校で広がるなり、また周囲は皆、手の平を返したように、彼の言いなりになった。ただただ彼を恐れて。面倒に巻き込まれないように。適度な距離をとろうと。自分が標的にされないように。彼は同世代からも丁重に扱われることに慣れてしまったのだ。自分の見せかけの力を誇示することで、束の間失くしてしまった大切なものの存在を忘れられ、気を紛らわせられたのだろう。これが不幸の始まりだ。

 ねじれにねじれてしまったぼっちゃん役を演じたのは宮世琉弥だ。磯村勇斗と共演した『恋する母たち』(TBS系)で演じた蒲原繁秋役で知名度を一気に上げた。エリート弁護士だが凄まじく選民意識の高い父親に反発し、自身も超進学校に通いながらも退学、ラッパーとしての活路を見出していく、かなり波乱万丈な高校生役を熱演した。いつだって家にいる時は家族とろくに会話もせずにヘッドホンを耳につけて外界との関わりを遮断していたような彼が、ラップ落語との出会いで覚醒していく姿を静かにとても自然にみずみずしく体現していたのが印象的だった。

 「ゴール一歩手前で振り出しに戻る。あともう一歩だったのにって志半ばなのが良いんじゃない。報われないラストの方がたくさんの人に名作扱いしてもらえるよ」と不吉な発言をぼっちゃんが繰り出していたが、次週いよいよ最終話。今の“大切にすることもされることも知った”青山は、黒くてドロドロしたものに絡め取られてしまったぼっちゃんとどう対峙するのか。たことの約束を果たせるのか。どうかラストにはほっと一息つけるような展開を堪能できますように。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第6話~:宮世琉弥、鶴見辰吾
第7話~:長野蒼大
第8話ゲスト:市毛良枝、宮野陽名、前田旺志郎、森迫永依
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
エンディングテーマ:「CHAIN」Nulbarich(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga

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