『エヴァンゲリオン』碇シンジに『幽☆遊☆白書』蔵馬も 声優・緒方恵美の軌跡とその魅力

エールロックは唯一無二の存在感

 また緒方は音楽家の一家に生まれたことで、幼少期から音楽に囲まれて育ち、高校時代から作詞作曲など行うようになったという。1994年にミニアルバム『HALF MOON』でデビューし、これまでに12枚のアルバム、12枚のシングルなどをリリース。2000年にランティスにレーベル移籍して以降は、em:ou(エムオウ)名義で作詞作曲を手がけている。

 2012年からは、自らの音楽をエールロックと名付けて活動。きっかけは、2010年11月に発売されたPSP専用ソフト『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』エンディングテーマ「再生-rebuild-」で、東日本大震災直後に同曲を聴いたファンから「励まされた」「勇気がわいた」など多くの反響があってのことだという。これを機に、これからは人の背中を押すためだけに音楽を作って行こうと決心し、聴く人にエールを贈る音楽ということでエールロックと名付けたそうだ。

 4月21日には、そんなエールロックの最新作となる『劇薬 -Dramatic Medicine-』をリリース。GLAYのHISASHI、「紅蓮華」の作曲者=草野華余子、Q-MHzのメンバーでもある黒須克彦、『アルゴナビス from BanGDream!』や『SK∞エスケーエイト』への楽曲提供も行うASH DAHERO、ZOCや鈴木このみなどへの楽曲提供を行うANCHOR、さらにアニメやゲームの世界でも有名なmanzo、宮崎京一などが参加。コロナ禍に緒方が感じた感情が赤裸々に綴られ、アニメやネットの住人とも親和性のあるサウンドで表現した1枚になっている。

 声優とアーティストという両面において、第一線で活躍する緒方恵美。彼女の声帯は普通の人よりも長いそうで、それはつまり音域の幅があるということ。それに加えて太く丸みを帯びた声質は、声楽家の母親譲りなのだろう。その特異な声を演じるためだけでなく、メッセージを伝えるためのツールとしても機能させている。これまでに演じてきた多彩な役柄を取り込み、それを自己表現の手足としながら表現されるエールロックは、リアルの世界と二次元の世界の境界線を軽く飛び越えるほどの唯一無二の存在感を放っている。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

■公開情報
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
全国公開中
企画・原作・脚本・総監督:庵野秀明
監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
テーマソング:「One Last Kiss」宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
声の出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、石田彰、立木文彦、清川元夢、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、長沢美樹、子安武人、優希比呂、大塚明夫、沢城みゆき、大原さやか、伊瀬茉莉也、勝杏里、山寺宏一、内山昂輝、神木隆之介
音楽:鷺巣詩郎
制作:スタジオカラー
配給:東宝、東映、カラー
上映時間:2時間35分
(c)カラー
公式サイト:http://www.evangelion.co.jp
公式Twitter:https://twitter.com/evangelion_co

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