『エヴァンゲリオン』は閉じた作品ではない 観た人を熱狂させる理由を考察

 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が好調だ。緊急事態宣言の最中、公開初週もレイトショーを控える映画館も多かった中で、公開から1カ月で70億円を突破し、根強い人気を証明した。4月11日には庵野秀明総監督の舞台挨拶もあり、これをきっかけにさらに興行収入を伸ばすのではないだろうか。

 一方で『エヴァンゲリオン』を鑑賞したくても、そのハードルが存在するのも、また事実だろう。テレビシリーズ26話、漫画作品、ゲーム作品、さらに劇場版もいくつもあり、どこから観ればいいのかわからない、今さら誰かに聞くことができないという方もいるはずだ。今回はそんな方々に向けて、簡単なガイドとなることができれば幸いだ。

 結論から述べると、今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を鑑賞するためには、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から始まる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを鑑賞すれば、何も問題がない。1作あたり2時間弱の作品を3作品と考えると、少しだけハードルを感じる方もいるかもしれないが、MCUシリーズなどに比べたらまだ優しいものだと割り切ってもらいたい。

 もちろん『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にこれだけ熱中する人々が多い理由まで知りたければ、テレビシリーズはもちろん、キャラクターデザインなどを務めた主要スタッフである貞本義行の描いた漫画版を読んでもらうこともオススメしたいのだが、新規ファンが物語を追うだけならばその必要はないだろう。

 では、なぜエヴァはそこまで人を熱狂させるのだろうか? その魅力は多岐にわたり、庵野秀明をはじめとする天才クリエイターたちの生み出す映像表現のケレン味やバトル描写、卓越したオタク知識に支えられた作品たちのオマージュ、深い考察ができる物語の設定、キャラクターたちの魅力、音楽性の良さなどがあがるだろう。

 筆者はいつも『エヴァンゲリオン』シリーズを語る際に引き合いに出す作品として、太宰治の『人間失格』を挙げている。純文学作品と『エヴァンゲリオン』では、まるで異なるような印象も受けるのかもしれないが、ファンの熱意には似たようなものがあると感じている。いってしまえば、『エヴァンゲリオン』とは庵野秀明という監督による、アニメ版の私小説なのだ。

 『エヴァンゲリオン』の主人公、碇シンジの内向的面であったり、父親との碇ゲンドウとの確執などに対して庵野秀明の半生を反映しているという指摘も多い。また、事あるごとにシンジが立ち上がらねばならないのに、その度に人々を巻き込んでしまい、予期せぬ出来事が起きて自己嫌悪に陥る部分も、庵野監督の思いを反映していると言われている。