『呪術廻戦』はさまざまな意味で“革新的”な作品に 釘崎野薔薇の異色なヒロイン像
現在『週刊少年ジャンプ』で連載中、芥見下々原作のアニメ『呪術廻戦』(MBS/TBS系)。3月26日に放送された第24話「共犯」では、血塗と壊相が虎杖悠仁と釘崎野薔薇を追い詰めるなか、2人はコンビネーション技を繰り出して敵を一掃する。
半年間続いてきたアニメ『呪術廻戦』もこのエピソードが最終話。これまでMAPPAはその類稀なるアクション描写とキャラクターデザインで原作ファンはもちろん、アニメから本作を知ったという人も、とにかく観るもの全てを魅了してきた。天井知らずに毎話ごと進化していくそのクオリティは、最終話でも健在。これまでも戦闘シーンとBGMの組み合わせが痛快な場面はいくつもあったが、今回のように虎杖と釘崎のコンビネーションをcoldrainのMasatoが歌う挿入歌「REMEMBER」の音楽に合わせて描くというのは初の試みだった。まさに、最終回らしいスペシャル感。虎杖は戦闘を重ねるごとに状況把握など含め、落ち着いた印象が出てきているのに対し、今週我々はようやく“本気”の釘崎野薔薇を目の当たりにする。
壊相の術式「蝕爛腐術」によって、腐蝕する有毒の血を浴びた虎杖と釘崎。激痛に蝕まれる中、釘崎は自分の体内に交わった壊相の血を利用して「共鳴り」を繰り出す。自分の手首に巨大な釘を何の躊躇いもなく打ち付けていく彼女は、笑う。その狂気に、思わず壊相もドン引きしてしまう。その後、虎杖の近接攻撃に合わせて相手にダメージを与えるよう、いくつも釘を打ち込んでいき、最終的には新技「簪」を披露。血塗を倒した。
思えば、釘崎はこれまでのジャンプ作品の中でも異色なヒロインだ。誤解を恐れずに言うと、“可愛げ”の欠片もない。ヒロインらしくないヒロインと聞かれて思い浮かぶのは、ゲロインというパワーワードを生み出した『銀魂』の神楽だが、あの娘でさえ愛嬌があった。しかし、果たして“可愛げ”なんてものは必要だったのだろうか。その“可愛げ”は誰のためのものだったのだろうか。
釘崎が異様なのは、彼女が漫画/アニメの世界にとどまる女性像を逸脱しているからだ。『呪術廻戦』の登場人物の多くがリアルな人物像ではあるが、その中でも釘崎は「毛穴開いてるぞ」というセリフを放った時から、現実的な女性として作品内で存在感を発揮していた。また、姉妹校交流会では西宮との攻防の末、男性優位の呪術界のなかで生きる女性呪術師ではなく、「私」として生きるという力強い意思表示で魅せた。彼女は間違いなく、自身の操る鉄釘のように一つ硬い芯の通った現代を生きるリアルな女性なのである。男に媚びることもせず、痛みにも負けないし、無闇やたらに泣いたりしない。禪院真希もそうなのだが、“強い女性キャラ”が描かれる際に弊害となるわざとらしさが釘崎にないのは、先のステイトメントのように彼女が男女云々の話とはかけ離れたところで、フラットに自分の表現している点にある。