『おちょやん』母になりたい千代とお母ちゃんと呼べない寛治 高城百合子と再会も

 「ここいてる間は、うちがあんたのお母ちゃんや」。身寄りのない寛治(前田旺志郎)を預かることになった千代(杉咲花)と一平(成田凌)。『おちょやん』(NHK総合)第77回では、のちに「大阪のお母ちゃん」と呼ばれる千代の世話焼きキャラが発動した。

 第16週から登場した寛治。利発そうな眼とくるくる変わる表情の無邪気さが、千代の中の何かをくすぐるのだろうか? 普段おっさんたちの世話ばかりしている千代は、若い寛治に心を奪われる。新派劇団の座長だった父を亡くし、母は「生きてんのか死んでんのかも分かれへん」という寛治の生い立ちに思うところがあるのだろう。千代は「うちのこと、お母ちゃんて呼び」となかば強引に迫る。

 寛治の方は「ええわ、そんなん」とそっけない。「恥ずかしがってんのとちゃう。お母ちゃんはもっときれいで優しい人がええ」と憎まれ口を叩いて、ますます千代をその気にさせるのだった。いたずらっ子で目はしの利く寛治は人の気持ちを汲むのも上手で、拗ねる一福(西村竜直)の前でトランペットを褒めちぎってみせる。そんな寛治なので、千代を「お母ちゃん」と呼べないのは単なるわがままではなく、そこには何か理由があるのだろう。「大人はみんな勝手や」とつぶやく寛治にいったい何があったのか。

 出会ったばかりの少年に肩入れしてしまう千代に、若干の危うさを感じるのも事実だ。母の愛を知らずに育ち、唯一の希望だった弟ヨシヲ(倉悠貴)に去られて、テルヲ(トータス松本)も逝ってしまった。パートナーの一平は夫婦であると同時に同志であり、無制限に甘えられる相手ではない。突然現れた年少の家族に愛情を注ぎたくなるのは理解できるし、寛治も寛治なりにそんな千代の思いに応えようとしている。たとえ「お母ちゃん」と呼べなくても、2人の間には家族のような関係が築かれつつあった。

 天海家を訪れた小暮(若葉竜也)と百合子(井川遥)。なんと2人は結婚していた。共演者と駆け落ちした百合子は、旅回りの劇団にいた時に病院を辞めた小暮と知り合い、今は夫婦で全国を回っている。「過去は振り返らない」と話す百合子の変わらない姿に千代は感銘を受ける。登場するたび波乱を巻き起こしてきた百合子。百合子たちの話を硬い表情で聞く寛治や、警察が鶴蔵(中村鴈治郎)を訪ねてきた理由も気になる。狭い天海家に嵐の予感が漂う。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/