浜辺美波の“はじめて”に恋せずにいられなかった『ウチカレ』 たくさんの片思いの結末は?

 このドラマは、たくさんの片想いで溢れている。ゴンちゃん(沢村一樹)、漱石(川上洋平)と碧の関係、光と渉と空の関係という主軸はもちろんだが、男性陣それぞれのかつて好きだった人、光にとっての未羽(吉谷彩子)、漱石にとってのサリー(福原遥)、渉にとっての「ウサギの飼育係の女の子」とのエピソードも印象的だった。

 空が生まれてからずっと「空」の写真を撮り続けていた風雅のまだ見ぬ娘への片想いは、空の「あお(碧)」へ繋がり、さらにその向こうにいる天国の鈴にも繋がる。ゴンちゃんも風雅も、碧も、大人たちのすれ違いの片想いは、何十年にも渡ってずっと続いている。

 「片想い」とは、「あったかもしれない世界/かつてあった世界を思う」ことでもあるのかもしれない。好きなもの・好きな場所がずっとその形のままあり続けることはなく、「形あるものはいつか滅する」。そして、「恋に時なんかないから。戻る時は戻る。時、平気で飛び越えるから」とサリーが言うように、恋は気まぐれで、永遠に続く保証なんてない。絶対的と思われた親子の関係でさえ、揺らぐ時は揺らぐのだ。確かなものなどなにもない。

 その一方で示される、東京タワー、ボブ・ディラン、大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」、ジャニス・イアン「ウィル・ユー・ダンス?」という、時代が変わっても煌めきを失わないものたちもまた、このドラマを美しく彩る。

 移ろいやすいこの世界を、私たちはどうして生き抜こう。どうやって世界を留めることができるだろう。「水無瀬、書け!」と光は言った。碧と空、2人が持つ唯一の武器は「書く」ことだ。それだけが彼女たちを自由にする。

 空は、光と共に作った漫画のタイトルを「私の生きている世界はたくさんある世界の中の一つ」という意味で『右から4番目の世界』にしようと言う。書くことで空は、「世界」を作れることを知った。あったかもしれない世界を、留めたい世界を。かつてあった世界を。

 書くことで彼女は、血の繋がらない母と、血よりも濃い繋がりを感じ続けることができる。また、書くことで「誰かの心の中にあるものを具現化したら心が通じ合ったのも同じ」だから、光という、「母ちゃん」と同じ、もしくはそれ以上に自分の胸の内を明かすことのできる存在に出会えた。

 そんな母娘2人が迎える最終回。風雅もしくは漱石と共に碧はすずらん町を出るのか、それともゴンちゃんが引き留めるのか。碧が何より愛する人、空は何を思い、何を選ぶのか。最強の親子が選ぶ最強のラストを、楽しみにしている。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。
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■放送情報
『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:菅野美穂、浜辺美波、岡田健史、沢村一樹、川上洋平、有田哲平、中村雅俊、福原遥、大地伸永、長見玲亜、吉谷彩子、中川大輔、東啓介ほか
脚本:北川悦吏子
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:小田玲奈、森雅弘、仲野尚之(AX-ON)
演出:南雲聖一、内田秀実
主題歌:家入レオ「空と青」(ビクターエンタテインメント)
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/uchikare/
公式Twitter:@uchikare_ntv
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