町田啓太×藤原季節×森崎ウィンの互いに補い合う関係性 隠れた名店『西荻窪 三ツ星洋酒堂』
男子3人が運営するバーが、何やらいま話題である。それはもちろん、テレビドラマ『西荻窪 三ツ星洋酒堂』(MBS)のこと。主演に町田啓太、共演に藤原季節、森崎ウィンを迎えた作品だ。ところがもう閉店(最終回)間際。足繁く通っていた方からすれば名残惜しいものだろうし、「一度は行ってみたかった……」などと口にしても後の祭り。せめて最後の一夜だけでものぞいてみてほしいものである。
東京・西荻窪にある「三ツ星洋酒堂」はちょっと特殊なバー。ここで客に提供される料理は、缶詰を創意工夫して調理したものなのだ。店には大量の缶詰があり、これらが尽きるまで営業をするのだという。缶詰といえば、開封した時点で人の口に入れられるものだ。皿に移し替えてレンジでチン、といった絵に描いたような“手抜き”をする店も世にはあるが、ここは違う。シェフ・中内智(藤原季節)の手にかかれば、味気ない見た目の缶詰料理もたちまち絶品料理へと姿を変えるのだ。
そんな料理のおともには、やはり美味い酒。とはいえお洒落なバーである。ここはひとつ、上品なカクテルでも頼んでみたいところ。けれども、なにを頼めばいいのか分からない。初めてのバーでカウンター席に着くと、たまにこういうことがある。自分はなにを飲みたいのか、なにを飲むのが正解なのかが分からないのだ。しかし心配ご無用。ここのバーテンダー・雨宮涼一朗(町田啓太)は超一流である。目の前に座した客の話にひとしきり耳を傾けると、ニッコリ笑いながら最適の、“いま飲むべき一杯”を提供してくれるのだ。これぞホンモノ。彼は酒をつくるのが上手いこと以上に、相手の感情を読む能力に長けている。
そしてこの店には、いつも奥の席でひとり物憂げな表情でグラスをあおっている男がいる。そう、彼こそが「三ツ星洋酒堂」のオーナー・小林直樹(森崎ウィン)だ。どこかニヒルな雰囲気をまとった気難しい人物で、せっかくのお客さんにも平気でドギツイ言葉を浴びせたりする(誰も注文してないのに……)。とはいえ、彼の口にする言葉はどれも正論ばかり。耳の痛くなるような本質を突いた言葉だからこそ、客は誰しもうろたえるのだ(しかしできることなら絡みたくはない、というのが正直なところだが……)。