『俺の家の話』子供たちに罵倒された“昭和の父” 古い価値観をアップデートできるのか?

 このドラマには孫の世代も登場し、重層的に三世代の物語が同時進行している。寿一は秀生や甥っ子の大州(道枝駿佑/なにわ男子・関西ジャニーズJr.)を見て、かつて10代だった自分も彼らのような反抗期を迎え、稼業である能楽から逃げてしまったと振り返る。それに対して寿限無は「逃げるのも才能」「(子供に)逃げ道を作ってやるのも大人の役目だと思う」と真面目に語る。大州には池袋ウエストゲートパーク(西口公園)でヒップホップダンスを踊るという“逃げ道”があり、能の公演から抜け出して参加した高校ダンス部のコンテストで優勝。その姿は、家出してプロレス団体に入った寿一の少年時代に重なってくる。

 この第4話は、脚本の宮藤官九郎らしい言葉遊びも満載だった。元妻の彼氏が「お付き合いさせていただいて」などと言うと、そのありがちでやりすぎな謙譲語に、寿一は心の中で「させてやっている覚えはねぇ」といちいち突っ込む。進学塾とコラボした能楽の公演名は「YES!子供だって能(NO)」というダジャレ。また、名作恋愛ドラマ『ビューティフルライフ』を「ビューティフルライフル」、「Tik Tok(ティックトック)」を「ヨックモック」と言い間違えるなど。こういったセリフの面白さは、他のドラマでは味わえない。

 第5話では寿限無が我慢することをやめ、ずっと「家元の長男」として立ててきた寿一に初めてむき出しの対抗心を見せる。やはり『カラマーゾフの兄弟』のような骨肉の争いに突入していくのだろうか。一方、介護ヘルパーのさくら(戸田恵梨香)は倒れて一瞬意識を失ったところを「スーパー世阿弥マシン」に助けられたが、観山家のたんすでその赤いユニフォームを見つけ“中の人”は寿一だと確信。しかし、プロレスラーとして復帰したことを家族に知られたくない寿一は、さくらをごまかそうとする。さくらを肩に担ぎ上げた寿一はかっこよかったし、まるでMJというヒロインが登場する『スパイダーマン』のような楽しい展開になっていきそうだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未、佐藤敦司
編成:松本友香、高市廉
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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