クリストファー・プラマーは“伝説的俳優”だった 長い俳優人生と残したイメージを振り返る

 だがこのように、主役の輝きをサポートする役柄がプラマー氏の代表作だとされているのは、良い意味で彼らしいともいえよう。プラマー氏は、『サウンド・オブ・ミュージック』と同年のミュージカル作品『サンセット物語』でも、ナタリー・ウッド演じるスターを目指す娘を売り出そうとするプロデューサーの役を演じた。ここでは、新人ながら凄まじい輝きを放ち、この後本当にスター俳優になっていく脇役のロバート・レッドフォードに対して、自身は堅実な大人の魅力を見せている。

 恵まれた体格と切長な目が特徴的なハンサムガイでありながら、大輪の花のような派手さには欠けるところがあった。しかし、その上品さと物腰には嫌味がなく、むしろ淡白に思える部分はプラマー氏の長所ととらえることもできよう。この点が、ジュリー・アンドリュースやナタリー・ウッド、シャーリー・マクレーンなど、共演した個性あふれる俳優たちの相手役として、彼女たちを最大限に輝かせる存在になったといえる。

 そして82歳で史上最年長の受賞となった、アカデミー賞助演男優賞に輝いた『人生はビギナーズ』(2010年)が象徴するように、ベテランの伝説的俳優の多くが務める、新しい世代を導いていく役柄が、晩年のプラマー氏の公的なイメージとなっている。

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』Knives Out (c) 2019 Lions Gate Films Inc. and MRC II Distribution Company LP. Artwork & Supplementary Materials (c) 2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 そんな俳優人生のなかで、『スタートレックVI 未知の世界』(1991年)においてシェイクスピア演劇のセリフを引用しまくるチャン将軍を演じ、ミステリー映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)では、シャーロック・ホームズを演じた自身のキャリアが意識されているなど、彼の長い俳優人生は、他にも様々なイメージを残している。

 『スタートレック』シリーズといえば、カーク船長役を演じたウィリアム・シャトナーも、プラマー氏も、同じく若い時代をカナダのケベック州、モントリオールで過ごしている。筆者はモントリオールで開かれるファンタジア国際映画祭をレポートした際にモントリオールの街を訪れたが、古い歴史と先進的な街並みが混在し、豊かな自然のなかで進歩的で大らかに人生を楽しんでいるように見える現地の人々の姿には、まさしくプラマー氏のイメージと重なるところがあると感じられた。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』
3月5日(金)より、シネマート新宿ほか全国公開
監督・脚本:トッド・ロビンソン
出演:セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダ、ジェレミー・アーヴァイン、ダイアン・ラッド、エイミー・マディガン、ジョン・サヴェージ
配給:彩プロ
2019年/アメリカ/英語/カラー/116分/原題:The Last Full Measure
(c)2019 LFM DISTRIBUTION, LLC
公式サイト:thelastfullmeasure.ayapro.ne.jp
公式Twitter:https://twitter.com/LFMmovie

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