『知ってるワイフ』は実体験を元に制作 男女2名のプロデューサーが込めた、日本の空気感

 もしタイムスリップができるとしたら、あなたは過去の選択を変えたいと願うだろうか――。

 結婚5年目、いつの間にか恐妻家になってしまった主人公が、妻を入れ替えてしまうところから始まるドラマ『知ってるワイフ』(フジテレビ系)。初回から関ジャニ∞・大倉忠義演じる剣崎元春の不甲斐ない夫っぷりが話題を呼び、SNSを中心に視聴者からのツッコミが止まらない。妻を替えてもなお結婚生活の雲行きが怪しくなってしまうのだが、果たして幸せな結末を迎えるのだろうか。

 『知ってるワイフ』の原作は、2018年8〜9月に韓国で放送された同名ドラマ。同時間帯ドラマの視聴率1位(視聴者調査会社ニールセンコリア調べ)を獲得した人気作だ。韓国から日本へと舞台を移したことで、物語の構成やエピソードも調整されており、よりリアルな“結婚生活あるある”が映し出されている。実は、本作の細かな演出には、編成企画の狩野雄太氏(フジテレビ編成部)、プロデュースを務める貸川聡子氏(共同テレビ)が、赤裸々に実体験を話し合った内容から生まれているという。

 そこで両名に本作の制作背景から、「原作ドラマとは異なる」というクライマックスに向けた見どころについて聞いた。

描きたかったのは、いろんな意味での「パートナーシップ」

――なぜ今、日本で『知ってるワイフ』を制作しようと思われたのでしょうか?

貸川聡子(以下、貸川):狩野さんと脚本家の橋部敦子さんと、次のドラマは何にしようかと企画会議をしているときに、橋部さんが「夫婦をはじめとした、いろんな意味でのパートナーシップについて書きたい」ということをおっしゃっていたんです。私も狩野さんも今のドラマを作るテーマとして「すごくいいですね」となり、オリジナルも原作も含めて色々と考えていたときに、たまたま『知ってるワイフ』の原作を発見しまして。私たちがやりたいテーマが語られている作品だと思い、日本版としてリメイクしましょうということになりました。

――原作ドラマでは、夫の苦労を妻が理解してくれない、妻の思いに夫が気づけない……と、夫婦それぞれの言い分が描かれていましたが、おふたりがご覧になったときには、男女の視点の違いのようなものはありましたか?

狩野雄太(以下、狩野):男女の違いというのはなかったですね。主人公は男からみてもダメな夫だと思うので(笑)。妻の立場から見たら、そう思うよねって納得でした。

貸川:一致していましたよね。そのあたりの感覚は、男女に差があるわけではないんだなと。それからリメイクするにあたって、日本の生活や文化に合わせていく必要があったので、どんなタイミングでどんなことを考えているのか、3人でプライベートのことを話し合ったんですよ。だいぶ赤裸々に話したので、お互いの私生活が知られちゃった感があるんですけど(笑)。

――実際に、ドラマに取り入れられたエピソードを教えてください。

狩野:1話で、元春が遅くに帰ってきて、冷凍ご飯を電子レンジで温めるときチンの音が鳴る前にドアを開けるシーンは、3人とも「割とやるよね」ってなりました。一緒に暮らしている人が寝ていたら起こさないようにいろいろと音に気遣うみたいな。でも、元春の場合はそういうちょっとしたことは一生懸命やってるんだけど、大きなところでわかってないところがあるんですけどね。

貸川:夫婦でスーパーへ買い物に行ってレジで並んでいるときに、元春が買い足しに行っちゃう場面は、原作と少し変えていて。原作では2人なんですが、日本版は子供連れで来ているという演出にしました。そのほうがより「子供がいるのになんで今?」と、妻の焦りやイライラがより募りますから。あとは、澪(広瀬アリス)の「おい」とか「火曜だろ」みたいな言い方も、「結婚した途端に遠慮がなくなるよね」というところも反映させました。

ラストは原作ファンも見たことがないオリジナルの展開に

――他には、日本のテイストに合わせて変更した部分はありますか?

狩野:原作はドタバタラブコメディの要素が強めでそれはそれですごく面白いんですが、日本版はだいぶテンションを抑えた感じにはしています。というのも、原作では、例えば奥さんがモンスター化しているときに、顔が真っ赤になって湯気が出ている描写があるんです。夫から見たらそう見えるという演出だと思いますが、奥さんの立場から真剣に怒っているのに、って自分が女性視聴者だったら馬鹿にしているのか! とイラッとするかもしれないなと。

貸川:原作では奥さんと再会してしまうシーンで防犯用の催涙スプレーを撒き散らしてしまったり、クレーマー顧客を一本背負いしたりしているんですけど、あのテンションが韓国ドラマらしくて、我々も原作ドラマを観て大笑いしたところなんですが、日本の銀行の方に取材もさせていただいたところ、やっぱり日本の銀行ではありえないってなってしまいました。でも、面白いからやろうかっていう話は出ていて、いろいろと探りましたよね。

狩野:探りましたね。でも、今回我々がテーマにしていたのはパートナーシップだったので結果、お互いの視点やリアルな日本の空気感みたいなところを丁寧に描こうということになりました。

貸川:単純に変えたシーンと言うと、生瀬勝久さん演じる謎の男・小池良治の役を、原作よりもかなり膨らませてファンタジー要素を強調しているところがありますね。元春との友情のような関係性が見られるのも、面白いかなと。

――沙也佳(瀧本美織)も、両親からチェロを「趣味」と言われてしまって、「ん?」となるシーンがあり、原作のキャラクターとは少し違う印象を受けました。

貸川:そうですね。澪に対する単なる当て馬のようなキャラクターにはしたくないなっていうところはありました。

狩野:裕福な家庭で鳥かごの中で育てられた女性が、どうやって自分で人生を歩んでいくかというところも見せていけたらと考えています。沙也佳の今後の展開も、原作とは結構変わってきますね。

貸川:それ以外で原作と結構違うのはラストかもしれないですね。最終回はかなり原作とは違った展開なので、原作ファンの方は驚かれるかもしれませんが、楽しみにしていただきたいです!