アニメにおける「映画とは何か」という問い 2020年を振り返るアニメ評論家座談会【後編】

コロナ禍でアニメーションの表現に変化は生まれるのか

ーーリアルサウンドでも緊急事態宣言下にコロナが映像文化にもたらす影響について特集を組んだのですが、実際にアニメーションにどのような影響をもたらしていくのでしょうか?

藤津:制作面では、アフレコはいままでのように大勢で収録することができないので、大変だという話は聞きます。ダビングも、参加する人は最小人数で、リモートでやっている人も現れているそうです。映画は無理ですけど、テレビアニメなら大丈夫なのでしょう。一方で、アニメーターさんが家で自宅作業をするケースが増えている。デジタル作画も進んでいるみたいですけど、制作工程そのものをデジタル化しないと末端がいくらデジタルになっても意味がないということがはっきりしてきたのですが、そこはまだ移行したところが少ないという感じですね。だから、2020年は問題が明らかになった年だったということだと思います。

杉本:今のところ、内容面での大きな変化は感じていません。テレビドラマでは、コロナがある世界を舞台にした『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)といった作品が作られていますが、そういう動きはアニメでは起きていないですよね。

藤津:『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の第1話で、一瞬モブがマスクしているカットを作っていましたね。

杉本:あれはコロナを意識していたということですか?

藤津:おそらく。記憶では、土壇場で差し替えてたような画でしたし。企画が影響してくるのは、2021年以降だと思います。フィクションだから気にせずにやればいいという考え方の一方で、観ている人が違和感を持つので日常系のような作品は難しくなるのでは? という意見もあるようです。僕は、ちょっとだけズラした世界、つまりファンタジー世界の街が舞台なんだけど日常系といった作品が増えるのではないかと予想しているんですけど。

杉本:なるほど。例えるなら、異世界転生で、村人になって農業をやるようなタイプの作品ですね。

藤津:そういうテクニックで、感性はもうほぼ現代の日本だけど、設えとしてだけ異世界とすれば、マスクがなくても違和感がなくなりますよね。

杉本:直球で、コロナ禍の中で日常を描く作品はそうそう出ないですかね。

藤津:テーマにするならともかく、テーマにしないと単純に顔が見えないアニメという難しい話になってしまいますからね。まずは漫画の方でそういう作品が試しに出てきて、それをアニメ化するという流れが、まずはハードルが低いと思います。

■公開情報
『魔女見習いをさがして』
公開中
声の出演:森川葵、松井玲奈、百田夏菜子、千葉千恵巳、秋谷智子、松岡由貴、宍戸留美、宮原永海、石毛佐和、石田彰、浜野謙太、三浦翔平
原作:東堂いづみ
監督:佐藤順一、鎌谷悠
脚本:栗山緑
キャラクターデザイン・総作画監督:馬越嘉彦
プロデューサー:関弘美
アニメーション制作:東映アニメーション
配給:東映
(c)東映・東映アニメーション
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