“小学生”の杉野遥亮たちをずっと観ていたい じつは“社会派ドラマ”『直ちゃんは小学三年生』

 主演・杉野遥亮が、“小学三年生の男子”に扮するドラマ『直ちゃんは小学三年生』(テレビ東京系)。2021年の新作ドラマが出揃ったところだが、本作は早くも折り返し。主人公・直ちゃん(杉野)が率いる少年たちは憎らしくも愛おしく、最終回のことを考えると早くも寂しい。“この子たち”をずっと観ていたいーーそう思える作品だ。

 本作は主演の杉野を筆頭に、登場人物の誰もが“小学生”に扮して展開するコメディドラマ。年相応の子役が登場することはなく、監督を務める近藤啓介の言葉を借りるならば、「ランドセルを背負った大人」が出てくるばかり。じつにユニークな着想だ。想像しただけでも面白いが、実際にこのキャラクターたちを目の当たりにすると、やはり笑いを禁じえない。

 そんな小三男子に扮するメンツもたまらない。ロン毛をなびかせる渡邊圭祐は、金持ちで頭の良い少年・きんべを演じ、ときおり小三とは思えぬ難しい言葉を遠慮がちに口にする。基本的には真面目な少年だが、人によっては彼の悪気のない金持ち然とした佇まいが鼻につくかもしれない。

 丸メガネが印象的な前原滉が演じているのは、貧乏でガサツな少年・てつちん。そのデリカシーのない言動の数々から、彼はまさに“ガキんちょ”という言葉がぴったりだ。しかし彼もまた悪気はない。

 小三の役にもかかわらず、ヒゲが目立つチーム最年長の竹原ピストルが扮しているのは、心優しき少年・山ちょ。気弱な少年ではあるが、ときに彼が振り絞る勇気は、ミュージシャン・竹原ピストルと同様に私たちの背中を押してくれるだろう。

 そして、タイトル・ロールの直ちゃんを演じている杉野。舌っ足らずな喋り方や、子ども特有の挙動とテンションの不安定さの表現は見事で、彼の無邪気さはついつい目で追わずにいられない。チームのリーダーとして申し分ない小三ぶりだ。設定やセリフ、スタッフを含めたチームワークの良さも大きいのだろうが、中心に立つ彼らを見ていると本当に小三に見えてくるから不思議である。

 この4人が本作で成し遂げているのは、“子どものような人物を大人が演じる”のではなく、あくまで“大人が子どもを演じる”ということ。いくらキャラクター設定や物語が同じであったにせよ、年相応の子役たちが演じたのでは本作の持つ本質的な面白さは生まれない。この面白さとは、なにも“笑えるかどうか”ということではない。等身大の少年たちが小三に扮するのと、演技経験も人生経験も豊富な大人たちが小三に扮するのとでは見えてくるものがまったく違う。“大人が演じる”ことに意味があるのだ。

 第1話で直ちゃんたちは、“大金が入っているかもしれないICカード「NORUMO」”を偶然にも拾った。それを片手に駄菓子屋のおばあちゃんに口から出任せで詰め寄っていたが、それを行うのが大人であれば詐欺行為となる可能性大。少なくとも中学生であれば補導対象だろう。それに第2話以降で直ちゃんたちは、どこかの廃工場を秘密基地とする。小三ならば注意で済まされるかもしれないが、これが大人ならば立派な不法侵入だ。基地を作るためにあちこちから廃材をかき集める行為も、大人ならば窃盗罪である。

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