『岸辺露伴は動かない』期待を超える実写化! 「だが断る」からも伝わる原作への“圧倒的敬意”

 言わずもがなこの「だが断る」は、露伴だけでなく、『ジョジョ』を代表する名ゼリフ。『岸辺露伴は動かない』の中でも露伴が使うエピソードはあるものの、この「富豪村」には出てこないオリジナル要素だ。そもそも原作(『ジョジョ』第4部)ではこの「だが断る」の後に、「この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやる事だ」と続く。つまり、ただ単に名ゼリフだからという安直な理由で入れられたわけではなく、「自分で強いと思ってるやつ=一究」という構図が出来上がって生きてくる「だが断る」というわけだ。小林へのインタビュー(『岸辺露伴は動かない』脚本・小林靖子が大事にした荒木飛呂彦イズム 「台詞に“ッ”を入れちゃう」)によると、演出の渡辺の要望もあったと聞く。『ジョジョ』の、荒木飛呂彦作品の真髄でもある圧倒的不利な状況から、主人公が運命を打破していく姿。露伴を演じる高橋の覚悟とスタッフ陣の作品への愛を強く感じさせた瞬間だ。

 ラストの「俺が敬意を払うとしたら読者だけだ」というオリジナルのセリフに、サプライズで刑務官役として登場した声優の櫻井孝宏(アニメシリーズの露伴役)、『ジョジョ』風の背表紙の『ピンクダークの少年』コミックスとコアファンも大いに楽しませた第1話「富豪村」。

 第2話「くしゃがら」では、高橋と映画『世界の中心で愛を叫ぶ』以来の共演となる森山未來が志士十五役で登場する。まだまだ『岸辺露伴は動かない』は始まったばかり。さらなる露伴の本性が垣間見られる予感がする。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合、NHK BS4Kにて、12月28日(月)、29日(火)、30日(水)22:00~22:49放送 (3夜連続)
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第1話ゲスト:柴崎楓雅
第2話ゲスト:森山未來
第3話ゲスト:瀧内公美、中村倫也
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
小説:北國ばらっど『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』所収「くしゃがら」
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
撮影:山本周平
照明:鳥内宏二
録音:高木創
美術:磯貝さやか
編集:鈴木翔
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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