『その男、東京につき』インタビュー
般若が語る、ラッパーとしての人生と自身のヒップホップ観 「地道にずっと音楽をやってきただけ」
「俺みたいなやつってたくさんいる」
ーーMCバトルが流行して、ヒップホップというジャンル自体への認知は広まったと思います。そうした環境による変化はありますか?
般若:改めて曲を人に届けるという気持ちはやっぱり強くなりました。そういう状況もあって、俺がMCバトルの人間だと周囲から決めつけられたので。だからその倍曲を届けたいというのは、ラスボスをやっていたときからずっと考えていました。MCバトルの出口みたいなものは作りたかった。盛り上がっていることはすごくいいことだと思います。
ーー現在はコロナ禍ということもあり、なかなかライブができない状況でもあるかと思います。
般若:そうですね。今年はほとんどいつもみたいにライブはできなかった。先週、地元のライブハウスでライブしたんですが、気づいたら9カ月ぶりぐらいのライブだったんですよ。久しぶりにやってみて、やっぱりライブっていいなと思いましたね。このままだとみんなもっと元気がなくなるじゃないですか。精神的に落ち込んでいる人も増えていると思うので、こんな状況ではありますが、やっぱりライブはやっていきたいです。曲ももっと出したいし。
ーー本作での般若さんの姿を見て、ラッパーになりたいと思う人もいるかもしれません。
般若:いいですね。やりたいと思うことが音楽じゃなくても別にいいと思うし。何かの力になれば、俺はこの映画ができてよかったなと思います。
ーー本作ではラッパーとしての般若さんの人生のほかにも、いじめの過去や親の不在など今まで明かされてこなかったパーソナルな部分も赤裸々に語っています。般若:そうですね。別に大袈裟な話じゃないし、俺みたいなやつってたくさんいると思うんです。いじめがこの先なくなるのかって言ったら、いじめなんて絶対なくならない。いつの世でもそういうことはずっと起きてきたわけだし。だったら、いじめられたときにどう対処するかが大事だと思うんです。でも、子供の頃はそういう辛い時間が永遠に続くように錯覚してしまう。でも大人になって振り返ると、実はあの時間って絶対に忘れられないけれど一瞬ではあったんです。俺みたいに歪んだやつがこれ以上増えないように、そのことは伝えておきたい。死ぬのもったいないってすごく思いますね。ほかに楽しいことがこの先たくさん待っているんだから。生きていれば悪いこともあるし、いいこともある。俺も42歳になってもまだイライラするし。
ーー本作は武道館ライブが大きな節目と位置付けられていますが、般若さんが思う、今後のドキュメンタリーを撮るきっかけになりそうなタイミングは?
般若:もうないでしょ(笑)。もう撮りたくないです(笑)。誰も俺のことを知らなくなった60歳ぐらいのときに撮ってもらえたらいいですね。さらにどうしようもねえ飲んだくれになってボロボロの状態のときにまた映画ができたら一番面白い(笑)。借金とかしまくって追い込まれているぐらいがいいな。