ゴズリングとファスベンダーの間で揺れる人類のさだめ 『ソング・トゥ・ソング』が描く大人の恋愛

 さて、愛をくれて自分を幸せにしてくれる相手がどちらなのか。その答えが明確であるにも関わらず、ともに闇の中で感覚を失える相手を選んでしまうことは、仕方ないけどあることかもしれません。若い時に一通り恋愛は失敗してきたと思いきや、大人になっても間違いを選び取ってしまうことこそが恋愛であると、美しい映像と共に本作は教えてくれる。それでも、それぞれが自分の心を救ってくれそうな相手と一緒にいようとして、思いも寄らない方向に向かっていくのが、これもまた恋愛のリアルさだなと思うわけです。

 ビターな脚本の中で生き生きとする、豪華俳優陣も素晴らしいのが本作。ライアン・ゴズリングは『ラ・ラ・ランド』で味をしめたのか、本作でもキーボードを弾きながら歌います。いいです、彼は何をしていてもイケメンです。彼と恋仲になるルーニー・マーラはやはり、痛々しいほど多くのものを感じて疲れ切った表情が素晴らしい。ホアキン・フェニックスと息子さんと、どうぞお幸せに。マイケル・ファスベンダーの本作での色気と虚無感、無機質さは『SHAME -シェイム-』を思い起こさせます。『エイリアン:コヴェナント』で縦笛を吹いていたシュールな彼も好きです。そして何より凄いと思ったのが、ナタリー・ポートマン。来年40歳になるなんて半ば信じられないほど、若いファッションを違和感なく着こなしています。カフェで働いている時のミニ丈トップスから除く、ぼこっと盛り上がった腹筋の縦筋が見事なものです。

 音楽の街・オースティンを舞台にした作品ということもあり、音楽フェスシーンも多め。さりげなく沢山の俳優や著名なアーティストが画面に登場する楽しみがありつつ、やはり心に響く独白と、破滅的なラブストーリーが魅力的な一本です。

■公開情報
『ソング・トゥ・ソング』
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
監督・脚本:テレンス・マリック
製作総指揮:ケン・カオ
出演:ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマン、ケイト・ブランシェット、ホリー・ハンター、ベレニス・マルロー、ヴァル・キルマー、リッキ・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、ジョン・ライドン、フローレンス・ウェルチ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
美術:ジャック・フィスク
衣装:ジャクリーン・ウェストー
音楽:ローレン・マリー・ミクス
編集:ハンク・コーウィン
配給:AMGエンタテインメント
2017年/アメリカ/128分/シネマスコープ/カラー/5.1ch/PG12/原題:Song to Song
(c)2017 Buckeye Pictures, LLC
公式サイト:songtosong.jp
公式Twitter:@SONGTOSONG_JP

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