ゴズリングとファスベンダーの間で揺れる人類のさだめ 『ソング・トゥ・ソング』が描く大人の恋愛
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、マイケル・ファスベンダーを見るたびに邪な考えが浮かんでしまうアナイスが『ソング・トゥ・ソング』をプッシュします。
『ソング・トゥ・ソング』
“大人の恋”を考えるうえで、ぴったりの映画が『ソング・トゥ・ソング』。歌を歌うことを夢見ながら何者にもなりきれず、痛みを通して生を感じるフリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)。そんな彼女に温もりと肉体を超えた魂の関わりを教える、売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)。フェイに痛みと快楽を与えるが、心が空洞の成功した大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)。そして彼が見つけた、夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)。この4人の恋心や肉欲、渇望、焦燥感が交差するラブストーリーです。監督・脚本を手がけるのは、ひりつく愛を描く天才テレンス・マリック。
それぞれの登場人物の独白によって紡がれていくストーリー。その感情と考えが、あまりにもリアル過ぎます。心を通わせることを知らないから、何かをどう感じたらいいのかわからないから、“痛み”という痛覚を通して何かを感じようとする。激しい性行為でしか、満足ができない。そんなフェイが、肉体的に満足させてくれていたクックにはない、魂や優しさを持つ男BVに出会う。そこで初めて、愛を実感するわけです。しかし、体の相性はクックの方が良い。それに、自分の持て余す虚無感を共有できる相手でもある。さあ、難しい問題です。ただでさえ、この映画を通して「ライアン・ゴズリングとマイケル・ファスベンダーがそれぞれ違うアプローチをしながら自分に迫ってくる」ことの破壊力を痛感するのですから。どちらかを、選べと。選べません。