ソ連全体主義の社会を再現 前代未聞の手法で人間の本質に迫る『DAU. ナターシャ』日本公開決定

 第70回ベルリン映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した『DAU. ナターシャ』が、2021年2月27日より全国公開されることが決定した。

 ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴びると、“史上最も狂った映画撮影”と呼ばれた本プロジェクトに着手。それは、いまや忘れられつつある“ソヴィエト連邦”の記憶を呼び起こすために、“ソ連全体主義”の社会を完全に再現するという前代未聞の試みだった。実にオーディション人数約40万人、衣装4万着、欧州史上最大の1万2千平米のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40カ月、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間……莫大な費用と15年もの歳月をかけて本作を完成させた。

 タイトルの『DAU』とは、1962年にノーベル物理学賞を受賞したロシアの物理学者のレフ・ランダウからとられている。彼はアインシュタインやシュレーディンガーと並び称されるほどの優秀な学者であると同時に、スターリンが最高指導者を務めた全体主義時代において、自由恋愛を信奉し、スターリニズムを批判した罪で逮捕された経歴も持つ。

 本作『DAU. ナターシャ』は、その膨大なフッテージから創出された映画化第1弾であり、ランダウが勤めていた物理工学研究所に併設されたカフェのウェイトレス、ナターシャが主人公となる。本作でスカウトされた新人ナターリヤ ・ベレジナヤが演じるナターシャの目を通し、観客は独裁の圧制のもとでたくましく生きる人々と、美しくも猥雑なソ連の秘密研究都市を体感していくことになる。

 ソ連の某地にある秘密研究所。その施設では多くの科学者たちが軍事的な研究を続けていた。施設に併設された食堂で働くウェイトレスのナターシャはある日、研究所に滞在していたフランス人科学者と肉体関係を結ぶ。言葉も通じないが、惹かれ合う2人。しかし、当局から呼び出された彼女は、冷酷なKGB職員の待つ暗い部屋に案内され、スパイの容疑をかけられ厳しい追及を受けることに……。

 撮影は徹底的にこだわって行われ、キャストたちはセットとして当時のままに再建された秘密研究都市で約2年間にわたり実際に生活し、カメラは至るところで彼らを撮影した。本作には本物のノーベル賞受賞者、元ネオナチリーダーや元KGB職員なども参加。町の中ではソ連時代のルーブルが通貨として使用され、出演者もスタッフも服装も当時のものを再現した衣装や食料で生活、毎日当時の日付の新聞が届けられるという徹底ぶり。出演者たちは演じる役柄になりきってしまい、実際に愛し合い、憎しみ合ったという。

『DAU. ナターシャ』特報映像

 公開決定に合わせてお披露目となった特報映像では、この秘密研究都市にあるカフェで働くナターシャを中心に、同僚ウェイトレスのオーリャ、ナターシャと濃密に関わることになるフランス人科学者のリュックなど彼女を取り巻く人々を捉え、彼女を待ち受ける壮絶な運命を予感させるものとなっている。

■公開情報
『DAU. ナターシャ』
2021年2月27日(土)より、シアター・イメージフォーラム、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
監督・脚本:イリヤ・フルジャノフスキー
出演:ナターリヤ・べレジナヤ、オリガ・シカバルニャ、ウラジーミル・アジッポ
撮影:ユルゲン・ユルゲス
配給:トランスフォーマー
2020年/ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア合作/ロシア語/139分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:DAU. Natasha
公式サイト:www.transformer.co.jp/m/dau/ 
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公式Instagram:@DAU_movie 

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