『おちょやん』浪花千栄子は日本映画黄金期を支えた存在 「大阪のお母さん」の足跡を辿る

日本映画黄金期を支える名バイプレイヤーに

溝口健二監督『衹園囃子』

 1950年代は映画産業は右肩上がりに成長を続けており、プログラムピクチャーの時代に大量の作品が制作された。1953年(昭和28年)には専属監督・俳優の引き抜き等を禁止する五社協定が調印される中で、フリーでどんな役も演じられる浪花千栄子には、貴重なバイプレイヤーとして多くのオファーが寄せられた。

 演技力に定評のある浪花千栄子は、黒澤明や小津安二郎、木下恵介らに名監督の信頼も厚く、溝口健二監督作『祇園囃子』でブルーリボン助演女優賞を受賞したほか、多くの映画、テレビドラマに出演した。晩年は、オロナイン軟膏(大塚製薬)のCMでも親しまれた浪花千栄子。1973年(昭和48年)に66歳の生涯を閉じた。

朝ドラヒロインの系譜

 朝ドラは、これまで原作ものを幅広く取り上げながら、年代ごとに名作を送り出してきた。1990年代から2000年代にかけてはオリジナル作品、2010年代以降は、実在の人物をモデルにした作品が増える傾向にある。

 主に女性の一代記を描いてきた朝ドラだが、意外にも、実在の女優をモデルにした作品は少ない。筆者が調べたところでは、1978年(昭和53年)に放送された『おていちゃん』(NHK総合)があるくらいである。

 同作は、女優で随筆家の沢村貞子の半生を描いたもの。千栄子とは1歳違いで、名バイプレイヤーという共通点もある。沢村は東京出身であり、東西を代表する昭和の名女優が、朝ドラヒロインとして脚光を浴びることになった。

 波瀾万丈の人生を演じることによって切り拓いた浪花千栄子。『おちょやん』放送を機に、浪花千栄子が残した不朽の名作を鑑賞してみるのもいいかもしれない。

参考資料

『浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女』青山誠(角川文庫)

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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