ロイ・アンダーソン監督が『ホモ・サピエンスの涙』で伝えたかったこと 独自の制作活動に迫る

 『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』『散歩する惑星』のロイ・アンダーソン監督最新作『ホモ・サピエンスの涙』が11月20日に公開される。 前作『さよなら、人類』で、第71回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞に輝いたアンダーソン監督の5年ぶりの新作となる本作は、時代も性別も年齢も異なる人々が織りなす悲喜劇。全33シーンすべてがワンシーンワンカットで撮影された。

 『散歩する惑星』『愛おしき隣人』『さよなら、人類』と続いた“リビング・トリロジー3部作”を経て生み出された『ホモ・サピエンスの涙』はどのように誕生したのか。オンラインインタビューでロイ・アンダーソン監督に話を聞いた。

「人生というのは、悲劇的なものと希望に満ちたものが織り成すものである」

ーー前作『さよなら、人類』までの“リビング・トリロジー3部作”とはまた趣が異なる印象を受けました。今回の『ホモ・サピエンスの涙』はあなたのフィルモグラフィーにおいてどのような位置付けになるのでしょうか?

ロイ・アンダーソン(以下、アンダーソン):『ホモ・サピエンスの涙』は、当然のことながら“リビング・トリロジー3部作”のその先にある作品だと言えます。なかなか一言でいうのは難しいですが、繋がりという意味においても、これまでの作品をベースに生まれた映画だと言えるでしょう。

ーーなるほど。過去3作に比べると、音楽や色彩を含め、より悲哀的で物憂げなシーンが多いように感じました。一方で、カフェの前で少女3人がダンスを踊るシーンなど、青春映画のワンシーンのような希望に満ちたシーンにとても心を動かされました。悲劇的なシーンと希望に満ちたシーンのコントラストの意図について教えてください。

アンダーソン:いい質問ですね。私が今回の映画で伝えたかったのは、「人生というのは、悲劇的なものと希望に満ちたものが織り成すものである」ということです。そのコントラストを描いたことに気づいてくれていたのはうれしいことです。

ーーこれまでの作品との違いで言うと、本作では監督の作品で初めてナレーションが取り入れられています。なぜこの作品でナレーションを入れようと思ったのでしょうか?

アンダーソン: まず、話を前に進めるということ。それから、観てくれる人の興味をかき立てるという大きなポイントを意識しました。ナレーションが話を前に進めるという点では、『二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』でも同じことが言えると思います。淡々と情景を伝えていきますよね。ナレーションを入れた大きな理由はその2つです。

ーーそれは「ひとつの映画作品として話が流れていくようにする」という意味でしょうか?

アンダーソン:ええ、そうです。今回の登場人物たちは様々な年代層の人なので、別の年代層の観客にとってはピンとこない可能性もあると思いました。だから、ある種の解説が必要になる。ナレーションを入れることによって、幅広い年代層の興味を引く必要がありました。

ーーそれは、あなたの長編監督作の中でもっとも短い76分となった本作の上映時間にも言えることかもしれませんね。

アンダーソン:上映尺が短いことに対して、様々な意見があることは知っています。長いほどに良いという考えがあるのも事実ではありますが、必ずしもそうだとは言えません。短ければ短いなりの良さもある。『ホモ・サピエンスの涙』については、当初からこの上映時間を目指していたわけではなく、編集をしていくなかでこの時間に落ち着きました。