『先生を消す方程式。』はヒールが主人公の学園ドラマ? 田中圭の笑顔に隠された目的

「私が教育者としてあなたにできることは、あなたの人生に傷をつけることです」

 ヤバいやつが来た。田中圭主演の土曜ナイトドラマ『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)は、出だしから躊躇なく劇薬を投下する。順を追って話すと、田中演じる数学教師の“義経”こと義澤経男は帝千学園高校に赴任。担任になった3年D組は半年間で3人の教師が辞めたいわくつきのクラスで、初日から義経は生徒たちの洗礼を浴びる。

 ジャンル分けすれば学園ドラマになるのだろうが、とりあえず第1話で通常の授業風景はなかった。さわやかな汗や友情、甘酸っぱい恋愛模様もない(冒頭で義経と松本まりか演じる恋人・前野静のキス未遂はあったが)。代わりにあったのは、土下座と暴力と陰湿ないじめ。そして、いくつかの方程式だ。

 『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)や『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)の鈴木おさむが脚本を手がけ、放送枠を30分に濃縮して制作する『先生を消す方程式。』について、現段階で言えることは、本気で問題作を狙ってきたということ。万人受けするメロドラマを期待していた人は、考えを改めたほうがいい。

 名刺代わりの第1話で義経は、長井弓(久保田紗友)に発言をとがめられて謝罪、剣力(高橋侃)に水の入ったペットボトルを投げつけられる。力には階段の上から水をかけられた上、言いがかりをつけられて土下座。この時点でだいぶえぐいが、そこで終わらず、言われるがまま土下座の姿勢で床をひと舐めする。ゆうに10センチはあろうかという範囲を舐め終え、顔を上げて「皆さん、きれいに掃除しているんですね。床がおいしいです」と笑顔を見せた。

 完全に狂っている。土下座を強要されるところまでは義経に感情移入していたが、そんな気分はすっかり吹き飛んだ。この男はヤバい。しかし、これは義経の計略だった。ここで攻守は逆転。義経は「パワハラ=権力×精神的暴力×弱者」という方程式を示し、それぞれの項目に値を代入していく。権力は生徒、弱者は教師だ。理路整然と生徒の反論を退ける義経のターゲットは力だった。

 追い込んでいたようで、まんまと義経の罠にはまった力。そして冒頭のセリフになる。「これは教育です。私はあなたに教えたい、反省ということを」「自分を守るために、人を傷つけてんじゃねえぞ!」。心を折られた力は、パワハラの加害者であることを認め、義経に謝罪する。

 義経は何者なのか? 義経の話すことはもっともだが、そのための方法は常軌を逸しており、無条件で肯定できるものではない。義経が何を考えているかも不明。こうやって一人ずつ生徒を改心させていくのだろうか。だとしても、ここまでする理由がわからない。これは復讐なのだろうか? 元気だった静は人工呼吸器をつけてベッドに横たわっていた。

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