『朝が来る』第93回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品に 河瀬直美監督「誇りに想います」

 現在公開中の河瀬直美監督作『朝が来る』が、第93回アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に決定した。

 『あん』『光』の河瀬直美監督が直木賞・本屋大賞受賞作家・辻村深月のューマンミステリーを映画化し、カンヌ国際映画祭公式作品「CANNES 2020」に正式に選出された本作。

 実の子を持てなかった夫婦と、実の子を育てることができなかった14歳の少女を繋ぐ“特別養子縁組”によって、新たに芽生える家族の美しい絆と胸を揺さぶる葛藤を描く。実の子を持つことが叶わなかった夫婦、栗原佐都子役を永作博美、栗原清和役を井浦新が演じるほか、望まぬ妊娠をし、実の子を育てることができなかった少女・片倉ひかり役で蒔田彩珠、そして栗原夫婦と片倉ひかりを引き合わせる人物・浅見静恵役で浅田美代子が出演している。

 そして10月29日、一般社団法人日本映画製作者連盟の発表によって、本作が第93回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に決定。カンヌの常連というイメージの強い河瀬監督だが、同映画賞の日本代表作品に選出されるのは監督人生25年の中で今回が初となる。

 本作は、カンヌ国際映画祭「CANNES2020」公式選出の後、米アカデミー賞を占う前哨戦として名高いトロント国際映画祭をはじめ、サン・セバスティアン国際映画祭、釜山国際映画祭で上映。世界での公開地域も増え、北米・アメリカでの配給も決まり、フランス、スペイン、北欧、ブラジル、中国、韓国など、すでに26の国と地域で配給されることが決まっている。

 受賞に向けては、各国の代表作品の中から ノミネート5作品が選定される。近年では、2019年に是枝裕和監督作『万引き家族』が外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)にノミネートされている。

 今回の選出を受けて、河瀬監督は「本作品が描く、どんなことがあっても必ず朝は来ると思える希望の光を、日本代表として栄えある米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の枠へ届けられることを誇りに想います」とコメントしている。

 アカデミー賞授賞式は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け2カ月延期となり、現地時間2021年4月25日(日本時間4月26日)に開催される予定だ。

河瀬直美監督 コメント全文

本作品が描く、どんなことがあっても必ず朝は来ると思える希望の光を、日本代表として栄えある米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の枠へ届けられることを誇りに想います。撮影中、共に創りあげた俳優陣は、役を「生きる者」としてそこにあり、流す涙や心からの微笑みで嘘のない「本当」を作品に刻みました。映画を創るということは私にとってもうひとつの人生のようで、そこに降りそそぐ光や吹く風に勇気や希望を見いだします。子供のいない高齢の夫婦の元で両親を知らない私は養女として迎えられ、この生を慈しむことを知りました。運命的に出逢った本作品「朝が来る」には私が見てきたこの世界の闇と光が存在します。コロナ禍にあって、皆さんの生活が脅かされ、心が疲弊するとき、本作品に出逢っていただく時間は、少なからず「希望」を感じていただけるものとなりました。世界中の人々がその「希望」の光を持って、誰かに少しでも優しくなれる時間が訪れますように。
明けない夜はない!
大切な誰かと一緒に全国の映画館へ、
公開中の「朝が来る」に出逢いに来ていただけると幸いです。

映画監督 河瀬直美

※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記。

■公開情報
『朝が来る』
全国公開中
出演:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、中島ひろ子、平原テツ、駒井蓮、田中偉登、佐藤令旺、山下リオ、森田想、堀内正美、山本浩司、三浦誠己、池津祥子、若葉竜也、青木崇高、利重剛
監督・脚本:河瀬直美
共同脚本:高橋泉
原作:辻村深月『朝が来る』(文春文庫)
制作・配給:キノフィルムズ(木下グループ)
(c)『朝が来る』Film Partners
公式サイト:asagakuru-movie.jp

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