田中宏明×千眼美子『夜明けを信じて。』対談 プレッシャーの中で挑んだ作品の舞台裏

千眼「田中さんのすごさを実感しました」

ーーそのプレッシャーを乗り越えて、こうして作品となった今、田中さん自身としても達成感は大きいですか?

田中:そうですね。自分自身まだまだ経験が浅いからこそ、本作に全て賭けるという熱い気持ちでぶつかることができました。演じている間に、一条さんから学ぶものも多くて。商社に勤めていた時代なんて、あんなに忙しく働いている中でも、一条さんは家では黙々と自分の勉強をしたり、思想を語る時間を取ったりしていて、そういう姿勢に自分自身すごく感化されました。演じ終えた今でもそういう感覚は残っているし、大事にしたいです。そういう意味でもありがたい役をいただいたなと思います。

千眼:私ならもう「お酒飲んで、おやすみ!」という感じですね(笑)。

ーー共演者として間近で田中さんを見ていた千眼さんですが、田中さんが主演として成長していく様子を感じることはありましたか?

千眼:現場にいるときは、田中さんが何を考えているか全然掴めなかったんです。でも、この作品に真摯に誠実に、集中して向き合っている姿勢は、言葉がなくても、背中を見ていて感じていました。映像が全部繋がって、一つの作品として初めて観たとき、田中さんのすごさを実感しました。自分が出ていないシーンをそのときに初めて観たんですが、この役をずっと一貫して演じ続けることは、プレッシャーはもちろん、集中力・忍耐力という面でも相当きつかっただろうと思いました。でも、田中さんが、演じる大変さを現場で出しているのを見たことがなかったんです。「参りました!」と思いました(笑)。正直、ちょっと自分のことを役者として先輩だと思っていたところがあったんですが(笑)、一条さんという役に正面から向き合う力や、毎日を輝かせるために努力をし続ける姿勢といった、人としての魅力は千眼美子よりも田中宏明さんのほうが上だなと思いました。私はそんな田中さんに先輩面をしようとしていたので、反省中です(笑)。

田中:全くそんなことはないと思いますが、すごく嬉しいです。ありがとうございます。

ーー現場での印象的なエピソードはありますか?

田中:立花さんと一条さんが外でお話しするシーンを名古屋で撮らせていただいて。そのシーンはお互いの心の交流をすごく捉えているんです。お互いが惹かれ合いながらもそれぞれの道を模索している様子と、公園の穏やかな空気感もマッチしていて、自分の中では印象に残っていますね。

千眼:名古屋のシーンは、楽しいシーンばかりなんです。一緒にカレーを食べたり、お昼に社内報を読んで語ったり、ダンスパーティがあったり……。私がすごく印象に残っているエピソードが1つあって。名古屋城の敷地内で、熊本藩初代藩主の加藤清正像があって、その横で撮影をすることがあったんです。私は、加藤清正さんが何をしてきた方なのか分からなくて、「加藤清正ってどういう人?」と聞いたら、田中さんがスラスラと答えてくれて。やっぱり学がある人は違うなと思いました(笑)。そういうところもなんだか一条さんっぽいなと。

田中:たまたま熊本出身だったので、知っていただけですよ(笑)。

ーー名古屋のシーンは、2人きりだからこその雰囲気があると。

田中:一条さんと立花さん、自分と千眼さんがそれぞれ同じように時間を過ごすことができた気がします。

ーー注目してほしいシーンはありますか?

千眼:私はアナウンサー役でもあるんですが、カメラの一点を見たまま情報をお伝えするのがすごく難しくて。感情を乗せながらセリフを読むのは慣れているんですが、アナウンサーは一定のトーンで読み上げないといけない。そのギャップに苦戦しました。私が中継をするシーンがところどころあるんですが、1箇所だけ行き違いで、台本を事前にもらっていなかったシーンがあって。本当に今来た速報を読むみたいに、バインダーに挟んで渡されたセリフを読んだんです。すごく臨場感があったし、焦りました(笑)。私がバインダーを持っているシーンがあったら、そういうハプニングがあったんだということを思い出しながら観てもらえたら、面白いかもしれないです(笑)。

ーー田中さんはいかがですか?

田中:一条さんが悪魔と対決するシーンがあるんですが、そのシーンが見どころです。撮影前から、この映画の重要なシーンになると思っていたし、意気込んでいたので、ぜひ観てほしいですね。それまでのシーンが回想されるシーンでもあるし、作品のメッセージがぎゅっと詰まっていると思います。このシーンでは、初めてグリーンバックでCGを取り入れた撮影を経験できて。部屋がパカッと割れる場面があるんですが、あれは実はスタッフの方々が人力で割っているんです。ほかにもクレーンカメラで撮影したり、いろんな撮影方法を学びました。これは種明かしなんですが、自分が浮いているように見える場面は、実は僕がポールの上にちょこんと座っているだけなんです。このシーンでは、スタッフの方々も監督も意気込んでいましたし、僕もそうした期待に応えたいと思って、すごく熱量を持って演じさせていただきました。

千眼:過呼吸になる手前だったそうですね。

田中:そうなんです。他の俳優さんであれば、呼吸を使ってうまく演じられると思うんですが、僕にはそんな技術はなかったので、本当に過呼吸になる寸前まで演じて、痛みや苦しさを本当に感じようとしていました。監督のOKがかかるのは早いことが多いんですが、このシーンは何回もやりました。でも、それが逆によかったと思います。限界を何度も乗り越えたものをスクリーンに残すことができました。

■公開情報
『夜明けを信じて。』
10月16日(金)全国ロードショー
製作総指揮・原作:大川隆法
出演:田中宏明、千眼美子、長谷川奈央、並樹史朗、窪塚俊介、芳本美代子、芦川よしみ、石橋保
監督:赤羽博
音楽:水澤有一
脚本:大川咲也加
製作:幸福の科学出版
製作協力:ARI Production、ニュースター・プロダクション
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
配給:日活
配給協力:東京テアトル
(c)2020 IRH Press
公式サイト:yoake-shinjite.jp

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